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新しい“韓流四天王”とは──『梨泰院クラス』だけじゃない!  配信で見る最尖端の韓国ドラマ

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『愛の不時着』主演のヒョンビンとソン・イェジン。実際の交際にも発展し、話題になった(Getty Images)

 2020年のステイホーム中にNetflixが配信した韓国ドラマ『愛の不時着』『梨泰院クラス』が大ヒットし、日本で第4次韓流ブームが起きているようだ。

 実際、Netflix日本法人が発表した、20年の配信でもっとも多く「今日のTOP 10」入りした作品は、1位『愛の不時着』、2位『梨泰院クラス』、6位『サイコだけど大丈夫』、8位『青春の記録』、9位『キム秘書はいったい、なぜ?』となり、10位までに韓ドラが5作品もランクイン。前年と比べて韓ドラの視聴数は6倍以上に成長した。

 20年以上、韓国の映画・ドラマを見続け、韓国俳優の取材経験も多いライターの佐藤結氏と小田香氏は、今のブームをどう見ているのか? そして、『愛の不時着』『梨泰院クラス』の次に配信で見るべきものとは?(月刊サイゾー3月号より一部転載)

世界を見据えたドラマを数年前から制作していた

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佐藤 『愛の不時着』は当たるべくして当たったドラマではないかと思います。ラブストーリーの主人公を何度も演じた経験豊かな俳優が出演し、北朝鮮で暮らす人たちを魅力的に描いたのが間口を広げる力になった。ハリウッドのウェルメイド映画のようで、初めて韓ドラを見た人でも満足感を得られた。

小田 そうですね。脚本家のパク・ジウンは、もともとファンタジーをうまく取り込んでヒット作を作ってきた人。距離的には近いけれど普通は会えない北朝鮮と韓国の男女が偶然出会って恋に落ちるというのは、一種のファンタジーですよね。ほのぼのとした場面も多く、こっそり韓ドラを見てハマっている北朝鮮の兵士がいて、03年の人気ドラマ『天国の階段』の話をしたりします。そして、同作の主演だったチェ・ジウが本人役で特別出演するという遊びも効いてる。

佐藤 韓ドラ好きの間では「もっと面白い作品はいろいろあるのに」と言われてもいますけど、総合力ではやはりダントツですね。

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小田 一方の『梨泰院クラス』は男性ウケするだろうなと。よくマンガ『ONE PIECE』に例えられるように、仲間が集まって強大な敵と戦う。実際、原作はウェブトゥーン【編註:スマートフォンで読む韓国発の縦スクロールマンガ】ですよね。しかも、作者のチョ・クァンジン本人が脚本を書いているのがポイント。普通の脚本家が書き込みそうな部分はあえて削ぎ落とし、自分の表現したいことをやっている。マンガが原作の韓ドラは多いけれど、原作者が脚本も担当するのはあまり聞いたことがありません。

佐藤 ストーリーとしては韓ドラによくある復讐の話だけど、キャラクターが魅力的なので応援したくなる。それに、音楽もイイですよね。

小田 韓ドラは音楽の使い方が日本のドラマとはかなり違いますよね。基本的に1話70分と長いので、登場人物に合わせた曲が作られて、それが何度も流れる。

佐藤 しかも、ワンフレーズとかじゃなくて、たっぷり聴かせる。だから、曲を聞くだけで場面が思い浮かびます。

小田 OST(オリジナルサウンドトラック)もどんどん配信されて、相乗効果でヒットする。そして、食べ物もポイント。映画『パラサイト 半地下の家族』の出資・配給をした大手エンターテインメント会社CJ ENMの母体は食品会社だから、CJのドラマには自社関連の商品がよく登場するんです。『愛の不時着』もCJの子会社であるスタジオドラゴン制作なので、ドラマにはCJ系列のフライドチキン「bb.q Chicken」が出てくる。そういう戦略が巧妙です。

佐藤 日本でも「bb.q オリーブチキンカフェ」という店舗を展開していて、『愛の不時着』効果で繁盛しているようです。

小田 そもそも『愛の不時着』はCJが運営するケーブル局tvNで19年に、『梨泰院クラス』はケーブルテレビJTBCで20年に放送された作品ですよね。

佐藤 そう。韓国では、これまで主に地上波3局でいろいろなドラマが作られてきたけれど、ここ10年ほどはケーブル局でのドラマ制作・放送が活発になってきています。かつてのドラマの視聴率は地上波で20%前後、ケーブル局は10%に届くかどうかと差があった。でも今は、地上波に遜色のない視聴率を取り、地上波のディレクターや脚本家がどんどんケーブル局に引き抜かれています。そういった作品の中から、ネトフリは世界に受け入れられやすいものをセレクトして配信しているところがあります。

小田 どこの国でもヒットし得るような作品を見つけてくるリサーチ力が、ネトフリはすごいですよね。

佐藤 tvNやJTBCといった資本提携しているケーブル局で放送した作品をネトフリ独占で配信している場合も「Netflixオリジナル」としていますが、最近は『保健教師アン・ウニョン』や『キングダム』のようにネトフリ自体が制作するオリジナル作品も増えてきました。1話にかける制作費も大きくなり、俳優も豪華になっています。数年前、スタジオドラゴンの方に「ドラマ放送はtvNのひとり勝ちですね」と言ったら、「今後は配信が主流になるだろうから、Netflixにかないませんよ。私たちはケーブル局を守ることより、どれだけ世界で売れるコンテンツを作るかに注力したい」と話していました。今考えると、その時点ですでに世界を見据えたドラマを作っていたんだなと。

小田 地上波の放送ですら、韓国の若い人はスマホやタブレットで見るようになっていますから。何がテレビ用で、何が配信用なのか、視聴者にとっては区別はないですよね【編註:下段コラムも参照】。

ラブ、ヒューマン、サスペンスが並行

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佐藤 『愛の不時着』『梨泰院クラス』の後に見るべき作品としては、『サイコだけど大丈夫』をまず推したいですね。精神病院が舞台で、コミュニケーションが苦手な自閉症の兄と、彼を支える精神病棟の保護士の弟、童話作家の女性という3人が出会って、関係が変わっていく様子を描いたファンタジー・ラブ・ヒューマンドラマ。

小田 ミステリー要素も少し入っていますよね。最近の韓ドラは複数のジャンルをひとつにまとめる傾向があります。いろいろな要素を詰め込んで、それでいてひとつの作品としてうまく成立している。

佐藤 そうですね。『椿の花咲く頃』もラブ、ヒューマン、サスペンスが詰め込まれています。主人公は田舎町でスナックを経営しているシングルマザー。そこへやって来た純朴な警察官が彼女に一目惚れをして猛アタックをするけれど、彼女の初恋の相手で子どもの父親でもある男性と三角関係になるというラブと、彼女を捨てた母親との再会や田舎町の女性たちとの交流を描いたヒューマン、そこになぜか未解決の連続殺人事件というサスペンスが並行して走っていく。

小田 知り合いの韓ドラ初心者で『愛の不時着』にはそんなにハマらなかったけど、『椿の花咲く頃』にはハマったという人もいます。

佐藤 『愛の不時着』の村の人民班長を演じた名脇役のキム・ソニョンが、この作品では地元のおばちゃん役で出ていて、俳優も充実している。16年に小説『82年生まれ、キム・ジヨン』(チョ・ナムジュ著、筑摩書房)が出版されて以降、活発に議論されるようになった女性の生き方について考えさせられる作品でもあります。

小田 『パラサイト 半地下の家族』のイ・ジョンウンが演じたヒロインの母親をはじめ、印象的な女性が多く登場します。

佐藤 地味といえば地味な作品だけど、ケーブル局のドラマの人気が上がっている中、これは公共放送のKBSで放送されたもので、KBSとしては久々の大ヒット作です。

小田 主役のコン・ヒョジンは、この作品でKBS演技大賞を受賞しましたね。

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