再ブレイク中の「もう中学生」、ルール無用のマイルール「黒砂糖ビルってどういうことだろうな…」
#若槻千夏 #テレビ日記 #もう中学生
もう中学生「いまも家に背景だけが10個ぐらい行列作ってまして」
もう中学生が最近よくテレビに出ている。ネットの無観客配信や有吉弘行の冠ラジオの出演が話題になったりと、今から振り返ると前兆はあった。おそらく、テレビでは『有吉の壁』(日本テレビ系)に出始めたことがきっかけなのだろう。4月に入ってからは『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日系)、『テレビ千鳥』(同前)、『相席食堂』(朝日放送)、『マヂカルクリエイターズ』(テレビ東京系)、『PIKOOOON!』(フジテレビ系)などに出演。新番組『オトラクション』(TBS系)ではナレーターも務めている。
先週は、3~6日の4夜連続で彼の冠特番『もう中TV』(静岡朝日放送)が放送。放送圏外だったので見逃し配信で視聴したけれど、もう中学生は相変わらず突拍子もないように見える言動を繰り出すかと思うと(「おミカン食べながら見てると思うから、そのおミカンの飛んだ汁を、このあと放送が終わったら拭いてね~」)、その場の状況を言い表す適格なワードを放つ(「中京大中京みたいになっちゃった」)。共演者の向井慧(パンサー)らが彼の言動に翻弄されるさまも含め、とても面白かった。
また、8日には『マツコ会議』(日本テレビ系)に出演。自宅からのリモート出演でマツコ・デラックスとトークを繰り広げていた。
その中で、彼が自身のネタ帳を見せる場面があった。ネタ帳には「作りたいもの」として「ドリンクバー」とか「リムジン」とか「まいごセンター」とか「ホームラン打ってガラス割っちゃう家」とかの絵が。彼のネタ作りの順序としては、ネタの筋書きをまず作ってそれに合わせてダンボールを工作するというよりは、まず作りたいものの絵を描き、そこからネタの着想を得るということになっているようだ。もう中は言う。
「今も家に背景だけが10個ぐらい行列作ってまして」
彼の感覚に引っかかった具体的なモノが先にあり、それを実際にダンボールで作ってしまい、ネタはそれに後乗せする。そう考えると、彼のネタの突拍子のなさ、脈絡のなさもうなずける。もう中学生の自宅での生活を追った過去の番組では、ネタ帳を見ながら「黒砂糖ビル……これどういうことだろうな。黒砂糖ビル……なんかちょっと意味わかんない」と言いながらネタ作りをしている彼の姿があったりして(『金曜日のソロたちへ』NHK総合、2019年10月4日)、彼自身も脈絡を解読できないこともあるようだけれど。
上述の『もう中TV』でもこんな場面が。ずっと自作のカンペを手に番組を進行していたもう中学生。疑問に思ったパンサー・向井が尋ねると、そこに書かれていたのは「セロリをセルリ」「らっきょう3粒食べてきました」などのフレーズらしい。なるほど、番組の進行とは一切脈絡のない、彼の感覚に引っかかった何かがまずそこにある。
もう中学生は、番組の台本とは別に、彼独自の台本を持つ。番組の台本の上で踊ったり、台本の上での踊り方を語ったりというよりも、彼独自の台本が唐突に私たちに開陳される。『マツコ会議』によると約20年間の芸歴で彼のネタ帳は500冊以上。しかも中身は「ホームラン打ってガラス割っちゃう家」の絵とか。そんなノートの中から、「裏回し」といったルールの外側にある自分のルールを持ってくる。その裏切りと独自のワードセンスに、思わず笑ってしまう。と同時に、テレビで活躍する芸人が多くいる中でなぜか彼はそんな“暴挙”を許されている、そういった状況に笑ってしまう。
いつか彼の口から唐突に「黒砂糖ビル」という言葉が出てくるのではないか。出てきたところで決して言葉の意味はわからないだろうその瞬間の到来を、私はなぜか待ち望んでいる。
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事