チュート徳井・SW小沢と暮らした“第3の同居人”桝本壮志―6000人の芸人を送り出した放送作家が予言する「第7世代の次がもう来ている」
#放送作家 #第7世代 #桝本壮志
芸人を辞めたからこそできる「6000人の若手を育てた」実績の真相
――講師としてのお話が今ありましたが、桝本さんはNSCで数々の芸人を育ててきていますよね。今作の帯にも「6000人の芸人を育てた」とあります。
桝本 当初は「なんで売れなくて芸人やめた俺が教えるんだろう」って思ってたんですよ。でもやってみてわかったのは、売れてる芸人さんには語れないものがあるんだな、ってことでした。面白いネタの作り方が書いてある教科書はないわけです。だから、売れてる芸人さんが教えるとしたら「俺はこういうふうにつくってるよ」という経験則なんですね。その言葉は非常に重いですが、逆に言うと、その人は自分の1パターンしか語れない。
でも僕ら裏方は「チュートリアルはこうつくってるよ」「あの人はこうつくってるよ」って、いくつも例を並べられる。15個の例を出されたほうが、生徒さんにとっては圧倒的にヒントになりますよね。僕は生徒さんに「こうしたら売れるよ」って言ったことはないし、「面白くないよ」と言ったこともないです。「面白いけど、僕ならこうするかな」「こういう考え方もあるよね」と、一緒にブレストする感じですね。
――たしかに、芸人さんにインタビューすると、ネタの作り方や考え方は、本当に千差万別なんだといつも思います。
桝本 そうなんです。芸人同士はよく「どうやってネタ書いてる?」って話すんですよ。一緒に暮らしてみてわかったんですが、チュートリアルは座付き作家を置かなくて、完全に全部徳井くんが書いてる。スピードワゴンだったら、小沢くんは、友だちの作家を一人呼んで部屋に閉じこもって、漏れてくる声に「なんかしゃべってるな」「笑ってるな」と思ってたらネタができあがってる。「枕元にペンを置いて夢の中に出てきたことをパッと書く」って言ったのは次長課長の河本でした。だから本当に人によって違うんです。そういうところも面白いですよね。
――今作の主人公の“僕”はなかなか売れずにくすぶる期間が長く、かたや同居人の“佐伯”は相当な売れっ子です。現実でも大半の若手の方は「売れる」ことを目指していますが、売れたら売れたでその先も大変なわけですよね。年齢が上がるほどテレビの第一線で活躍する人数は減っていく中で、生き残る術というのはあると思いますか?
桝本 まず「売れる」ってところで言うと、コロナの影響で芸人さんのサイクルが、ますます早くなると私は読んでます。コロナによってテレビをはじめメディアの制作費が下がってますよね。その結果として、比較的安価でつくれる芸人さんの番組やクイズ番組が非常に増えました。そこに輪をかけて、まだ売れてない若手芸人さんたちがYouTubeとかでトークしたり、笑いを取り始めている。芸人という立ち位置が分散化してるんです。お笑い研究家みたいな方が「ブームは7年周期だ」なんて言いますけど、とんでもねぇぞ、と。なんだったらもう第7世代の次が来ているとすら感じます。
だからどうやって残っていくかというのは、非常に難しい問いですね。でも、お笑い芸人の歳の重ね方はいつ見ても素敵だなと思います。売れ続けている人って、やっぱりみんなちょっとずつ変容していっていると思うんですよ。同じスタイルでずっと売れてるのって、さんま師匠くらいなんじゃないでしょうか。時代をちゃんととらえて、小さくアジャストしていく。それはコツのひとつかもしれません。
『三人』(文藝春秋)
桝本壮志/著 価格:1650円 発売中
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桝本壮志(ますもと・そうし)
1975年広島県生まれ。人気放送作家として多数の番組を担当。AbemaTVをはじめ、社会現象となるネットコンテンツの企画にも携わっている。母校である吉本総合芸能学院の講師を務める。
ツイッター @SOUSHIHIROSHO
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