『青天を衝け』ついに土方歳三が登場!「両足の裏に五寸釘」残虐すぎて映像化不可能な“鬼の副長”の所業
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芹沢鴨、暗殺の一部始終と土方の二面性
暗殺事件の舞台は、芹沢が宿泊しており、新選組の隊士たちも多数立ち寄っていた八木家という民家です。そこの息子・為三郎と母親の証言によると、この夜は大雨がふっており、雨後は逆に蒸し暑く、寝苦しかったそうです。
すでに寝ていた為三郎がふいに目を覚ますと、家族ではない人影が家の中にいるのが見えました。背格好で土方ではないか、と彼は思ったのだそうです。為三郎はまた熟睡してしまうのですが、土方が芹沢の様子をうかがいに来てから約20分後、今度は4、5人の男たちがものすごい勢いで玄関から飛び込んできて、寝ている芹沢に切りつけました。
即死できなかった芹沢は部屋からヨロヨロと歩いて出てきて、為三郎の机にぶつかりドサッと倒れたところ、後ろからトドメを刺されて絶命したそうです。この時、芹沢に覆いかぶさられながらも、為三郎は目を覚ましませんでした。ですから、これは為三郎と死んだ芹沢の隣に寝たまま、腰が抜けて動けなかった彼の母親の証言となります。ちなみにその後、為三郎は芹沢の死体の下から引っぱりだされて、ようやく目を覚ますという有様でした。
しばらくして近藤勇がきちんと袴姿で現れたのに続いて、素知らぬ顔をした土方がどこかで着替えを済ませて入ってくるのを見て、為三郎は「どうも恐いながらおかしくて仕方がなかった」(『八木為三郎老人壬生ばなし』)そうです。テロが日常茶飯だった幕末京都に生まれ育った子供は、根性が据わっていますね。
ちなみに農民出身の土方や近藤とは異なり、芹沢鴨は水戸藩士の出でした。長身、色白、筋肉質な身体の持ち主で、子どもにもやさしく、女ったらし。土方や渋沢といった「武士になりたい農民」と「生粋の武士」の間では軋轢があって当然ともいえます。
しかし、貴公子めいた外見の芹沢の中に、気に入らない商人の蔵に大砲をぶち込んで笑い転げるような異常さが本当にあったのか、という問題ですよね。
それはあれだけ残虐だった土方が晩年は「母のように」優しく、部下たちから慕われていた……という二面性にも通じることかもしれませんが。
このように、渋沢喜作と共に会津戦争、箱館戦争を転戦していくのが土方歳三という謎めいた内面を持つ人物なのですが、その人生の中でもっとも狂気的な残忍さが発揮されていたのが、文久3年という一年だったというわけです。映像化はさまざまな意味で無理でしょうが、頭の片隅に置いておくとドラマがいっそう面白く見られるかもしれません。
ドラマの「予告編」でチラッと映っただけでも、町田啓太さん演じる土方から、ただならぬ空気が出ていたのは、当時の土方が本当に「鬼がかっていた」ことと無縁ではないでしょうね、というお話でした。
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