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中国のbilibiliからは撤退するも…1億5000万円も売り上げる!  対外化する(?)VTuber市場

日本発の新たな文化──中国での活動の難しさ

 さて、このようなメディアの事情もあって、国内では「何かよくわからないけど、流行っているもの」という見方をされがちなVTuberだが、海外のオタクカルチャーでは「新たな日本のコンテンツ」として爆発的に人気を伸ばしているようだ。

「20年頃からホロライブが中国を中心に、海外でも支持を集めるようになりました。きっかけはいくつかありますが、そのひとつは間違いなく、桐生ココの存在でしょう。バイリンガルという長所をいかし、海外掲示板の『Reddit』のミームをうまく取り入れて、英語圏にも彼女が所属するホロライブというグループ自体が知れ渡るようになりました。そんな流れもあって、昨年から英語圏向けVTuberグループ『ホロライブEnglish』が登場しています。メンバーのひとりである『サメちゃん』こと『がうる・ぐら』は、200万登録者を超え、キズナアイに迫る勢いになっており、デビューから半年も経っていないことを考えると、かなりのハイペースです。もともと、中の人が転生前に100万人くらいの登録者数を持っていたというのもあるでしょうが、キャラクターとして面白かったのは間違いないでしょう」(広田氏)

 また、泉氏は海外での人気に関して、YouTubeのアルゴリズムが関係していると予測する。

「私は毎日、海外のニュースサイトでVTuberに関する記事を検索しているのですが、検索に引っかかるニュースは英語記事だけではないんですよ。多いのがメキシコのスペイン語記事や、ブラジルのポルトガル語記事で、南米でも流行していることが分かります。特に、ブラジルのオタク界で人気が爆発したきっかけは、ホロライブに所属する白上フブキの『Im. Scatman』という動画だと言われています。スキャットマン・ジョンの曲を歌ったショート動画なのですが、英語圏だけでなく、ブラジルにも届いていたようです。これは私の推測ですが、こうした非英語圏のYouTubeは、日本ほどオススメ欄がガラパゴス化してないのでしょう。日本では日本の動画ばかり表示されやすいですが、南米では英語圏でバズった動画が不意に流れ込んできて、結果的に跳ねるという構造があるのかもしれません」

 才能も実績もある「中の人」と、企業のビジネス戦略が重なって、拡大した海外展開。しかし、いくらネット上といっても、文化が違う場所で商売を営むことで、時に困難に巻き込まれることもある。

 その象徴的な出来事が、20年9月に起きた前述の桐生ココと、同じくホロライブ所属の赤井はあとの中国での炎上と活動自粛だ。発端は彼女たちがそれぞれの配信で、YouTubeアナリティクスの統計データを公開、チャンネル視聴者の地域分布を表す「上位の国」として台湾を表示したり、読み上げたりしたことにある。中国共産党は台湾を独立国家ではなく中国領土の一部とする「一つの中国」という主張を掲げており、彼女たちの行動はそれを害するものだというのだ。

 2人の配信は、中国の動画サイト「bilibili」との業務提携によって中国国内でも中継配信されていたが、その規約に反する内容でもあった。間もなくbilibiliでの配信権は剥奪されてしまい、騒動の影響を受ける形で11月には「ホロライブ中国」という、bilibiliを中心に活動していたグループのメンバー全員がホロライブから離脱する結果となった。

「中国展開が解体された今、仮に活動を再開するにしても、アンチ化している中国ファンにとって一方的に都合のいい条件が要求されているのが現状です。言論の自由が許されていない国のため、ネット上での発言に同調圧力のバイアスがかかる傾向はあるにせよ、過激化したアンチが暴走しているため『水に流して忘れましょう』となるかは難しい。ただ、文化や環境の異なる中国の視聴者たちを、一方的に否定できるわけでもない。というのも、元はファンだった中国人によるコメントを読んでいると『現実の中国で生きていると政治性に直面する、それが嫌で忘れていたい/そこがないからこそVTuberを見ていたのに、政治に触れたから許せない』などと書かれていたので、切ない話です」(同)

 世界一位の経済大国である中国での活動が制限されるというのは、企業としては確かに損失だが、あくまでもそのダメージは一時的なものとして、捉える必要があるという。

「間違ってはいけないのは、そもそも現在は海外に依存しきっているわけではないということです。確かにビジネス的には上乗せしたほうが当然有利ですが、完全に海外依存はできません。そこは単純に多角展開をしているだけです。近い例で言うとアニメ業界があります。サブスクリプションの配信ビジネスが伸びてきた結果、最近は円盤商法から徐々に脱却していて、円盤を売らないといけない時代ではなくなっているそうです。しかし、円盤が売れると単価が大きいのも事実なので、売れたほうがうれしいのは間違いないというのと似てますね」(同)

 日本の視聴者たちをメインの柱として稼ぎつつ、海外の視聴者たちもサブの柱として利益を上乗せする。アニメやマンガなど他のオタク系コンテンツが伝統的に取ってきたビジネスモデルだが、VTuberも同じようなマネタイズになっているようだ。

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