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中国のbilibiliからは撤退するも…1億5000万円も売り上げる!  対外化する(?)VTuber市場

中国のbilibiliからは撤退するも…1億5000万円も売り上げる!  対外化する(?)VTuber市場の画像1
YouTube:【Debut PV】hololive English -Myth- : Time is Close

「よくわからないけど、ネットで流行っている」という見方をされているVTuberは、現在、海外で人気を拡大しつつある。例えば昨年のYouTubeのスーパーチャットの世界1位は、総額1億5000万円を叩き出したVTuberだった。なぜ、今これがウケているのだろうか?(月刊サイゾー3月号より一部転載)

 CMや深夜のバラエティ番組などで、見かけることが増えてきた印象のあるVTuber。2016年に先駆けであるキズナアイが登場して以降、その総数は増え続け、現在では1万3000ものVTuberが存在しているという。

 数的にはブームとなっているVTuberだが、その言葉しか知らない人は今も「アニメっぽい3D映像で歌ったり踊ったりして、その動画をYouTubeにアップしている」というイメージしか持っていないだろう。

 確かにキズナアイが登場した頃は、そのような活動をする者が多かったものの、その後、VTuberの活動は生配信主体にシフトしている。稼ぎ方も広告収入中心のモデルから、ファンを相手とした直接的なマネタイズが強まり、20年のYouTubeの投げ銭機能スーパーチャット(以下、スパチャ)の世界ランキングではさまざまなVTuberがランクイン。1位に輝いた「ホロライブ」(後述)の桐生ココは1年間で総額1億5000万円ものスパチャを視聴者から集めた。

 現在のVTuber業界(以下、VT業界)は市場的には「儲かる」状況であり、ゆえにVTuberを多数擁する企業も存在する。19年には月ノ美兎などを擁するバーチャルライバー事務所の「にじさんじ」(いちから株式会社)が急成長。20年には伊藤忠商事など4社から約19億円の資金調達を実施し、過去に実施した調達と合わせた累計調達額は30億円超となった。また、昨年は「ホロライブ」(カバー株式会社)の躍進も目立った。

 さらに、海外の熱心なファンも少なくなく、配信を見ると英語などのコメントも多く確認でき、熱は日に日に高まっている状況だ。

 もはや「ネットの流行」という域を超え、対外ビジネス化しているようにも思えるVT業界。国内メディアが取り扱い方をよくわかっていない間に、海外で躍進したのはなぜか? 本稿ではVT業界の今を追いたい。

手足は動かなくてもいい……上半身を揺らすのが主流

まず最初に、昨年はVTuberにとって飛躍の年だったと、日本初のVR専門ウェブメディア「PANORA」を運営するパノラプロ代表取締役社長・広田稔氏は語る。

「もともとVTuberは動画投稿メインの人が多かったのですが、19~20年で完全に生配信へとシフトしました。理由はコスト面。3Dのボディをリアルタイムで動かすのは、結構お金がかかりますし、技術者も何人か必要になります。ひとりで撮影、編集、アップできるYouTuberとは根本的に違うんですね。一方で『ライブ2D(平面のイラストで3Dのように動かす技術のこと)』は比較的製作コストが低くて、配信も自宅から気軽に、頻繁に行うことができます。そうすれば、視聴者との接触時間も長くなりますから、マネタイズも有利です。結果、キズナアイさんらを中心とする四天王(VTuber人気の礎を築いたキズナアイら5名を総称して四天王と呼ぶ風習がある)時代から、現在のにじさんじ、ホロライブ2強時代へと移り変わりました」

 低コストで量産でき、技術者の手を借りずに活動ができるようになった結果、VTuberの数が一気に増加。企業がビジネスモデルを構築したという。

 とはいえ、いくら「ガワ(アバター)」を作っても、演じる人がいないと意味がない。現在、にじさんじだけで100名以上のライバーが存在しているが、これらの「中の人」とは一体誰なのか?

「もともと『前世(VTuberになる前を指すVT業界の俗語)』でニコ生主をしていた人が、『転生(VTuberになること。ニコ生主だけでなく、別のVTuberだったケースも含む)』していることもあり、セカンドキャリアと化しているケースも多いです。『生主をやっていても儲からない』などの理由であることが多いのですが、彼ら・彼女らは生放送における視聴者への接し方を心得ているので即戦力なんですよ。生身だとビジュアル面を作り込むのはハードルが高いですが、キャラクターにすることでそのへんもクリアできる。案外、ネット文化の積み重ねの上に、今のVTuber業界があるんです」(同)

 さまざまな流れを組み入れながら、ある程度ビジネスとしての市場が出来上がりつつあるVT業界。しかし、既存のメディアでその躍進が取り上げられることは少なく、目にするとしてもウェブメディアくらいという印象だ。なぜ、界隈の熱は外へと波及していないのか? VTuberにも詳しいマンガ研究家の泉信行氏は、次のように指摘する。

「ネット上のコンテンツが注目されること自体、日本のメディアの構造上すごく難しいと考えざるを得ないでしょう。例えば、ボカロ文化やニコニコ動画にしても、一般層に認知されるまで長い時間がかかっていますし、しかも今では初音ミクそのものよりも、米津玄師やYOASOBIのAyaseといったボカロPや、彼らが育てた音楽のほうがテレビに好まれてますよね」

 実際、キズナアイが昨年7月に『ダウンタウンDX』(日本テレビ系)に出演した際、浜田雅功に「裏で声やってんねやろ?」とイジられていた。世に名を知らしめて4年以上経つが、捉えられ方が変わったとはいえないだろう。いくら、市場・文化として熟成していても、メディアが価値あるものとして受け止めてくれるとは限らないのだ。

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