『ペーパー・ハウス』や『ダーク』だけじゃない!──台湾ドラマにノリウッド映画までNetflixの非英語圏の名作
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アフリカの映画を配信──Netflixの革命
ここまでは、オリジナルのドラマを紹介してきたが、ここからはNetflixで配信されていないと、日本では視聴すら難しかった作品も紹介していきたい。
『ネットフリックス大解剖 Beyond Netflix』(DU BOOKS)の著者のひとりである、ライターの常川拓也氏は、19年1月にナイジェリア発の『LIONHEART/ライオンハート』がNetflixで配信が始まったことは「革命的だった」と振り返る。
「本作はノリウッドと言われる、ナイジェリアの映画産業を切り開いた一本です。ナイジェリアはイギリスの植民地だった影響で公用語が英語なのですが、本作は第92回アカデミー国際長編映画賞にエントリーし、一旦は承認されたものの『作中の言語が英語だから』という理由で、取り消されたので、当時結構な問題にもなりました。それにしても、日本のお茶の間で普通にナイジェリアの映画が見られるというのは、やはりNetflixの画期的なところですね。この作品以降、Netflixではさまざまなアフリカ映画が配信されるようになり、非英語圏発の作品が増えてきたなと思います」
本作が失格となったことで、「外国語賞とは一体何なのか」と物議を醸したが、その一方でNetflixでは、同じ第92回アカデミー国際長編映画賞でノミネートまで進んだ、現在公開中のポーランド映画『聖なる犯罪者』の、ヤン・コマサ監督による『ヘイター』を視聴することもできる。
「日本だと『聖なる犯罪者』の公開前に『ヘイター』が配信されたので、順番が変わっていますが、『ヘイター』と『聖なる犯罪者』は主人公の名前が同じで、かなり対比的に描かれています。前者は大学卒業後、PR会社に入社した青年が口コミで市長候補の評判を落とす仕事に関わり、SNSでフェイクニュースをバラ撒いてヘイトを煽って、罪のない人の人生を破壊していくストーリーで、後者は少年院を抜け出した青年が、自らを神父だと偽って活動していく話です」
『ヘイター』の撮影終了から、3週間ほどたった19年1月13日。ポーランドでパベウ・アダモビッチという、リベラル派でグダニスクの市長が、右翼青年に刺殺される事件が発生。あまりに映画の内容と酷似した事件が発生したことも話題となった。
「『ヘイター』は一見善良そうな青年が、SNSをフェイクニュースで炎上させてコミュニティを崩壊させていく一方で、『聖なる犯罪者』は前科者の“悪人”が神父として街の人たちに良いことを説き、その街を良くしようとするんです。なれば、前者は詐欺師が政治を操り、後者は詐欺師が宗教を操るという構図で、2本を見比べてみるのも面白いです」
また、宗教というテーマでは、アメリカとドイツの共同制作で、エミー賞にノミネートされた『アンオーソドックス』も見逃せない作品だ。
「厳しい戒律を遵守するユダヤ教超正統派の女性を主人公に、強制結婚や妊娠圧力をめぐる自己決定権などがテーマになっています。世界的にリプロダクティブ・ヘルス【編注:性と生殖に関する健康と権利】を扱う作品は増えていますが、旧態依然とした慣習が現代で普通に維持されていることへの驚きもあるし、内部の人たちが感じている違和感を表現している点でもタイムリーかつ重要な作品です。また、これは海外の作品全般でいえることですが、例えば『ジョジョ・ラビット』や『チェルノブイリ』は、それぞれドイツとロシアが舞台なのに、役者がみんな英語をしゃべっていることに違和感があったのですが、本作は全編イディッシュ語が話されているのも、評価するべき点ですね」
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