トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 「怒り」でも「かりそめ」でもない3人の共演

「怒り」でも「かりそめ」でもない、まさかの共演――有吉・夏目・マツコの幸せなトライアングル

夏目三久「10年も続いているので、私もこうやって戻ってくる場所がありました」

 2人はスタジオに黙って立っていた。有吉はいつものようにスーツに身を包み、夏目は黒いロングの衣装。腕を組んで目線を左右に動かす有吉。その場に漂う奇妙な沈黙に笑いを噛みしめる夏目。テーブルの上にはあの頃のようにお菓子が積んである。

 スタッフの「入られまーす」といった声とともに、マツコがセット裏から姿を現す。その姿、純白のウエディングドレスのような格好。笑い崩れる2人と、その笑いで崩れる沈黙。『てんとう虫のサンバ』をBGMに、「これぐらいのことするしかないじゃないのよ」と言いながらマツコが2人に歩み寄る。そんなマツコに夏目が「ありがとうございます」とストレートに感謝の言葉を述べ、有吉が有吉らしく謝意を伝える。

「精一杯ふざけていただいてありがとうございます」

 ここまででもう、”3人のあの雰囲気”が画面に漂う。

 話題は、最近の有吉の変化について。家で凝った料理を始めたり、しいたけやサボテンを育てるようになったのは、夏目の影響なのか? 本当のところどうなのか? そんな問いかけに、有吉は答える。

「これはちょっと僕の名誉のために言わせてほしいんですけど、まったくそういう(結婚の)影響はないです。僕個人の、僕個人の成長です。しいたけ作るのも、ランニングしたり、お散歩したり、料理をしてみるのも、もう46歳を迎えた自分の成長です」

 そう言い切る有吉に、マツコが嘆く。

「それ言われちゃったら、じゃあ私どうしていけば……。個人の成長もして、幸せも手に入れてってなったら、じゃあ私はどこに行ったら、どうやって自分をごまかしたらいいのよ」

 そんなマツコの嘆きを聞いた有吉は、笑いながら「結婚の影響です」と言い直す。マツコはその言葉を「もう、嘘でも言って!」と受け取るのだった。結局、有吉の生活の変化は夏目の影響なのかどうなのかについては、マツコの「嘘でも言って」のひと言でいかようにも解釈できるように、わかりやすく曖昧になっている。そんな互いをフォローする息の合ったやり取りに、積み重なった年月を改めて思う。「どっかでお笑いコンビの相方だと思ってますんで」という有吉からマツコへの言葉が沁みる。

 さらに、マツコを含めて3人で暮らせないかという話になったときのこと。「(一緒に暮らすのが)1人も2人も一緒じゃない」と説得にかかるマツコに、「マツコさんさえ良ければね」と有吉が乗る。そんな2人を尻目に、夏目はきっぱりとこう言った。

「私は嫌です」

 2人の悪ノリを断ち切る夏目の断言。その断言をふまえた上での2人の悪ノリ。3人の絶妙なトライアングルが懐かしい。マツコは感慨深げに語る。

「どうなっちゃうんだろうってちょっと思ってたのよ。夏目ともすごい久しぶりだし。意外と普通だったわね、この空間が。すっと戻った。だからすごいいい関係だったんだよね、3人」

 さて、番組では、今年の9月で夏目が芸能の世界を辞めることも発表された。そんな彼女は、最後に次のようにスピーチした。

「みなさんこのような機会を作っていただいてありがとうございました。『怒り新党』を青山さんにやっていただいて、久保田さんに『かりそめ天国』をやっていただいて。10年も続いているので、私もこうやって戻ってくる場所がありました。本当に嬉しいです。ありがとうございます」

『怒り新党』といいながらも、怒りから遠い多幸感がそこにはあった。『かりそめ天国』といいながらも、かりそめではない年月を積み重ねた番組だからこその多幸感だった。

 これを最後に有吉と夏目が共演することはないだろう――なんて断言はもうしないけれど、今の私は「これで済ませてくれ!」という気分だ。

飲用てれび(テレビウォッチャー)

関西在住のテレビウォッチャー。

サイト:記事一覧

Twitter:@inyou_te

いんようてれび

最終更新:2021/09/21 11:32
12
ページ上部へ戻る

配給映画