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『関ジャム』さだまさしが解説する同世代・矢沢永吉の“発明”と“革命”

『関ジャム』さだまさしが解説する同世代・矢沢永吉の発明と革命の画像1
さだまさし『案山子』EP盤

 4月18日放送『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)に、2年ぶりにさだまさしがゲスト出演した。つまり、今回はさだまさし特集企画なのだが、特にこの日はさだの“今”に焦点を当てる模様。題して、「何が気になる? さだまさしの“今”に迫る‼」である。

さだまさしが『朝顔』の折坂悠太を絶賛

 さだといえば、筆者には“ネット嫌い”というイメージがあった。しかし、今の彼はタブレットを難なく駆使するらしい。さだが使用するiPadを見ると、トップ画面にアイコンが並びまくっているのだ。アプリだらけ!

「昨日、寝てないんですよ。危険なところ削除しないといけないから」(さだ)

 確かに、DMMのアプリはないようだ。見ると、「ダービースタリオン マスターズ」や「青空文庫」、音楽アプリなどをインストールしていた。お金を持っているだろうに「青空文庫」を入れているのか……。iPadの主な使用目的は読書とメモだそうで、確かにさだくらいの年齢(69歳)になるとスマホよりタブレットのほうが使い勝手はいいはずだ。

 この流れで掘り下げるのは、さだが気になる若手ミュージシャンである。彼が「1度聴いたら忘れられない声」と絶賛したのは折坂悠太だった。知らない人に説明すると、現在、サントリーウイスキー「角瓶」のCM曲『ウイスキーが、お好きでしょ』を歌っているのが折坂である。番組ではドラマ『監察医 朝顔』(フジテレビ系)の主題歌になった折坂の楽曲『朝顔』が紹介された。

「言葉がちゃんと聴こえてくるし、今流行りの何かに似てない。僕はその辺が好きです。あと、自分らしさを持っている。何か伝えたいものがあって、それを伝えようというエネルギーがちゃんとそこにこもっている。こういう人は応援したくなります」(さだ)

 さだのiPadを見ると、Spotifyもしっかりインストールされていた。新人の曲も当たり前のようにチェックしているのだろう。パブリックイメージと違って、さだは感性が若い。

 というか、この世代のミュージシャンの感性は一様に若い。さだ以外にもいる。72歳の泉谷しげるは、朝日新聞のインタビューでAdoの『うっせぇわ』を「素晴らしい曲だよ。世の中に向かって怒っているところがいい」と絶賛していた。筆者は、さだや泉谷といった世代のミュージシャン特集を『関ジャム』にもっと組んでほしいとかねてより思っているのだ。

矢沢永吉が起こした革命をさだまさしが講義

 フォークミュージックの旗手がさだまさしだとすると、ロック畑には同世代に矢沢永吉がいる。さだは矢沢の登場を「ひとつの革命」と評した。「洋楽のメロディーに乗りにくい日本語の発音法を矢沢が変えた」というのが、さだの見方だ。

 基本的に日本語の発音は1音1語なので、ロックに乗せづらい部分は確かにある。だから、Lの発音をRに変え、KはCに、Eの発音にはiを加えてEiに、OはOuに改造したとさだは推測している。つまり、こういうことだ。

「OLE NO KANOJYO(おれのかのじょ)」

「OREi NOu CANOuJYOu(おれぇぃのぅきゃのぅじょぅ)

 正直、「本人はそこまで考えていたのか?」と疑問に思うところがないではない。でも、矢沢の歌唱法が洋楽と邦楽の距離を縮めたのは事実である。この役割は桑田佳祐、氷室京介、吉川晃司なども担ったが、初めて登場したシンガーは間違いなく矢沢だ。エポックメーキングだった。

「こういう努力を僕なんかはしないから、英語を使っても『どうもダメだな』と思って日本語にしちゃいますよね」(さだ)

 日本語詞に英語を入れ、日本語英語チャンポン歌詞で歌ったキャロルの出現は事件だった。“ロックは英語で歌うべき派”(内田裕也等)と“日本語で歌うべき派”(はっぴいえんど等)の間で議論が交わされた「日本語ロック論争」の折衷案というか、その先に生まれた発明と言っていいかもしれない。

『北の国から』の元ネタはクラシック音楽?

 今回、さだが明らかにしたのはクラシックからの影響である。3歳からバイオリンを始め、中学1年でバイオリン修行のために上京した人だ。紛れもなく、さだのルーツにはクラシックがある。

「クラシックの太い確かなメロディーを聴いてるじゃないですか。だから、曲作りするときに『あのメロディー、ここで使ったらいいな』と思ったクラシックの音楽は割と使っちゃいますね」(さだ)

 さだは、自作曲『風が伝えた愛の唄』でショパンの『ノクターン』Op.9-2のメロディーを引用している。他にも、『セロ弾きのゴーシュ』にサン=サーンスの『白鳥』を、『ひと粒の麦 ~Moment~』ではベートーヴェン『悲愴』の第2楽章Op.13を、それぞれ使用した。今回紹介されなかった曲だと、『風に立つライオン』では『アメイジンググレイス』のメロディーを引用したし、『北の国から~遥かなる大地より~』はモーツァルト『ホルン協奏曲第1番』第1楽章のメロディーと似ている。

「この歌(『北の国から』)ほど難しい歌はないですから! (歌詞が)『あ』と『う』だもん。ごまかしようがないから。これ、『へ』と『ほ』じゃ歌になってないね」(さだ)

 試しに「へ」と「ほ」で『北の国から』を歌ってみると、「へ~へー、へへへへほー」になってしまうのだ。なんて間の抜けた曲なのだろう。

「やっぱ、『へ』『ほ』で成功したのは『与作』だけだね」(さだ)

 いきなりの北島三郎いじり! 相変わらず面白いおじさんだ。もはや、これは漫談。さすが、厳選されたベストトークだけ収録したCD BOXを発売しているだけのことはある。

コロナ禍で『案山子』を選んだのには理由がある

関ジャニが多忙なため、最近はないことも多いセッションが今回は行われた。さだまさし&関ジャニ∞が演奏するのは、名曲『案山子』だ。うわーっ。これは、関ジャニ頑張らないと……。

 また、この時期にこの曲を選んだ意図を感じずにはいられない。都会で一人暮らしする弟を故郷から気遣う兄目線の内容なのだから……と思っていたが、番組はこの曲を「故郷の松の木目線の歌詞」と紹介した。なるほど、そうだったのか! 『案山子』にはこういう歌詞がある。

「元気でいるか 街には慣れたか 友達出来たか
 寂しかないか お金はあるか 今度いつ帰る」
「手紙が無理なら電話でもいい 『金頼む』の一言でもいい
 お前の笑顔を待ちわびる おふくろに聴かせてやってくれ」

 コロナ禍のこのタイミングでこの内容である。不意に耳にし、号泣する人が続出してしまうのではないか?

 そして、やはりさだの歌唱が見事なのだ。昔と声質は変わったものの、まだまだ響きに艶がある。この世代のミュージシャンはみんな元気! さだと同い歳といえば、スティングやKISSのポール・スタンレーなども69歳だ。みんな、今もカッコいい。

 一方、さだと共にヴォーカルを担当した関ジャニの村上信五と安田章大は力が入り過ぎの印象だった。脱力して歌うべき曲なので、2人の歌い方には違和感が正直残った。でも、年齢的に仕方がない。特に安田はフォーク向きの声質をしていたし、悪くなかった。

 というわけで、今回はさだまさしの凄さを再認識する1時間だった。そういえば、今もタモリはさだを毛嫌いしたままなのだろうか? 小田和正以上にさだを嫌悪していた気がする。確かに、『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)でさだのゲスト回を見た記憶がない。ふと、気になってしまった。

寺西ジャジューカ(芸能・テレビウォッチャー)

1978年生まれ。得意分野は、芸能、音楽、格闘技、(昔の)プロレス系。『証言UWF』(宝島社)に執筆。

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最終更新:2021/04/25 19:00
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