Netflixが日本のテレビを潰す? 「参入5年で500万人突破」にテレビ局はどう対抗するのか
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Netflixにも弱点……脅威論否定派の視点
一方で、こうした危機論に対して異なる見解を見せるテレビマンも少なくない。テレビ制作会社に勤務するC氏は「そもそもNetflixとテレビは役割が異なる」と語る。
「映画のようなドラマを見たいのならばNetflixの会員になればいいでしょうが、視聴者がテレビに求めるものは、バラエティや情報番組でもあります。それも食卓を囲みながら家族で安心して見られる内容のもの。そうした需要がある以上、Netflixが伸びたこととテレビの崩壊は、別のものとして考えなければならないと思います」
確かにC氏が指摘するバラエティや情報番組、さらに加えればスポーツ中継はNetflixの手薄な分野だ。スポーツに関しては、例えばオリンピック関連はNHKと日本民間放送連盟がすでに2024年までの放送権を獲得しており、Netflixが参入するのは当面難しいように思われる。ただし、バラエティを主戦場とする制作会社ディレクターのD氏は「20年春ごろ、Netflixが多額の予算を提示してバラエティ番組を企画するよう、複数の制作会社に打診をしていた。でも、新型コロナの感染拡大とともに立ち消えた」という話もあった。
いずれにせよ、現状ではNetflixにも弱みはあるのだ。前出C氏は、日本人の国民性も、逆風であるのでは、と考えている。
「日本人は自主的に選択するよりも与えられることを好む傾向が強い。無数にある番組から見たいものを探すNetflixよりも、電源をオンにするだけで番組が流れ始めるテレビのほうが日本人の好みに合っている。また噂好きなので、リアルタイムで放送されるものを見ながら、ツイッターで盛り上がったり、最近では音声SNSと言われるクラブハウスなどでも実況中継がされていますよね」
また、Netflixの会員数が世界で2億人を突破、日本でも500万人を達成というニュースが盛んに報じられているが、今のところ、500万人は日本のテレビ業界にとっては大した数ではない、と見る向きも。NHK放送文化研究所が19年に行った「テレビ・ラジオ番組個人視聴率調査」によると、視聴率1%は全国7歳以上の国民約118万人が見たことになるという。視聴率5%を取れば、数だけでは日本のNetflix加入者を上回るのだ。こうした事実を挙げて、「マスへの影響力としては当面、テレビの優位は揺らぐことはなく、人材の流出についても、より多くの視聴者に対してモノづくりをしていきたい人々はテレビに残り続ける」(C氏)といった声も一部のテレビ関係者からは聞かれた。
結局のところ、Netflixの存在は無視できないほど大きなものになってはいるが、現状でテレビに引導を渡すものではない、といったところだろうか。むしろテレビが危機感を持たなければならないものは、自分たちの体質なのかもしれない。
たとえば、テレビの広告ビジネスは「高い視聴率を取れれば高い広告費を取れる」という原則に基づいていた。しかし、インターネット広告費がテレビ広告費を19年に追い抜いた時点で、その原則が崩壊してしまった。
「インターネットとテレビの広告費の差はますます開いていくでしょう。この流れは不可逆のものですから、テレビが今後産業として伸びることはありえません。一方で、新型コロナの影響もあって、放送外ビジネスも停滞している。舞台やアートの興行を打って、マスメディアとしてのテレビを最大限利用して宣伝しまくるやり方も、今は効果を発揮しづらい。もちろん、どうにか新ビジネスモデルを考えねば、という人も多いですが、古い体質から抜けきれなくてずっと変化できていないままです」(B氏)
複数の民法テレビ局の番組が視聴できる「TVer」をはじめ、オンライン配信に生き残りの活路を求める動きもあるが、その先行きは不透明だ。かつてのキング・オブ・メディアがどのような末路をたどるのか、多くの者が固唾をのんで見守っている。
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