『青天を衝け』渋沢栄一の両親が大誤算した「千代との結婚」──自由放任主義で“色男”を支える妻の美学
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渋沢千代が「烈女」と呼ばれるゆえん
後になってからのことですが、千代と栄一の家に、親戚の若い男性が下宿するようになりました。千代と栄一の娘・歌子が母について書き残した『ははその落ち葉(※ははそ=柞、広葉樹の総称)』によると、その男性の言葉遣いや所作が乱暴でダメだと、千代が注意したことがあったそうです。
「男だからと云って、お前のように少しも愛嬌が無く、万事にごつごつしているのがよいことはない。私はお前に、真の色男になってもらいたく思う」と千代は言いました。
千代によると「真の色男」とは、“女性から命がけで慕われ、その愛情に応えることができるような男性”だそうですが、恐らく、彼女の中で栄一はそういう男性であり、そう振る舞ってほしかったのでしょう。
同時に、夫が一流の男になるには「色気」が必要で、それは女性との交流によって得られるものだろうと、と千代は感じていたようです。それが自分以外の女性との交流によるものであっても、私は構わないという態度を千代は見せ続けました。渋沢千代が「烈女」と呼ばれる理由の一つが、この手の夫の自由放任主義だったといえるかもしれません。
栄一も栄一で、一流の男は「歌くらい歌えなくてはダメ」というようなことを『論語』にかこつけて言っています。「歌える」とは、「風流なこと全般に通じている」という意味であり、そこには「恋愛」も含まれていると見るのが当然です。
そこまで夫を放任できてしまうのも、深い愛ゆえなのでしょうが、千代は自分にできることは家庭と子どもたちを、妻として守っていくことであり、夫に必要な色気を与える仕事は別の女性に外注することにした、ということでしょう。
まぁ、現代ではなかなか受け入れられない価値観でしょうが、それもこれも、自分自身が誰にも負けないくらいに美しいという千代の自負があってこそかもしれませんね。
「渋沢栄一、遅い性の目覚め」については今後触れる機会もあるでしょうが、今日のまとめとしては、性豪として知られる栄一だけれど、それは「遅咲きの狂い咲き」の結果だったということです。
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