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自民党が推進する「選択的週休3日制」、悪用に注意! 新型コロナでの減収で反発の声も?

自民党が推進する「選択的週休3日制」、悪用に注意! 新型コロナでの減収で反発の声も?の画像1
写真/GettyImagesより

「選択的週休3日制」の導入が急浮上している。自民党がその導入を政府に提言しており、政府も今夏にまとめる骨太方針に盛り込む方向で検討している。では、この選択的週休3日制とは、どのような制度なのか。

 新型コロナウイルスの感染拡大により、その防止策としてテレワークの導入や時差出勤などが行われる中で、政府としても多様な働き方の環境作りとして、週休3日制の検討を進めていた。

 4月13日には、政府の経済財政諮問会議で「人材への投資(ヒューマン・ニューディール)」という議題について、東京大学大学院の柳川範之教授がリカレント教育の強化(社会人の学び直し)支援を強化策として「選択的週休3日制の導入など働きながら学べる環境を整備すること」を提言した。

 また、4月20日には、自民党の一億総活躍推進本部が「選択的週休3日制」の提言を取りまとめた。「出勤日を1日減らすことで育児や介護と仕事を両立しやすくなる」としている。

 では、「選択的週休3日制」とはどのようなものなのか。端的に言えば、週の勤務日数を1日減らし、週休3日制にするということだが、その選択肢には大きくいって、以下の3パターンがある。

・給与水準を維持したまま、休日を1日増やすため、1日の仕事量の増加が求められる。
・給与水準を引き下げ、休日を1日増やすため、1日の仕事量は変わらない。
・給与水準を維持したまま、休日を1日増やすため、勤務する労働時間が増える。

 以上は、仕事量・生産性が減らない、若しくは減る場合には賃金で調整するという選択的週休3日制を導入しても企業にデメリットが発生しないことを前提としている。

 本来であれば、選択的週休3日制を導入するにあたっては、「給与水準は維持され、仕事量は変わらず、純粋に休日が1日増えることが望ましい」が、そのためには企業は仕事量が減少する分の補完措置として、増員などが必要になる。

 だが、政府の考える選択的週休3日制の導入には、企業に対してこれらの要請を行うことは入っていない。

 選択的週休3日制について、ネット上では、「新型コロナウイルス禍によって、給与やボーナスが削減されているのに、これ以上の収入減になるのであれば、週休3日制の導入など論外」との声も多く聞かれる。

 厚生労働省の20年の就業条件総合調査によると、「完全週休 2 日制より休日日数が実質的に多い制度」を実施している企業数は、従業員1000人以上で8.8%、300~999人で10.6%、100~299人で9.2%、30~99人で7.8%と平均で8.3%、労働者の割合では従業員1000人以上で9.5%、300~999人で11.6%、100~299人で9.8%、30~99人で8.4%と平均で9.8%となっている。

 企業数割合、従業員割合でも10%に満たない状況だが、近年、大手でも週休3日制を導入する企業が増加している。例えば、佐川急便では1日当たりの平均労働時間を10時間とする「変形労働時間制」を導入。給与水準は変わらず、兼業も認めている。

 ユニクロのファーストリテイリングも変形労働時間制を導入。日本IBMは「短時間勤務制度」を実施、勤務時間が短縮される分、給与も減る。みずほフィナンシャル・グループも希望する社員を対象に週休3日、週休4日の制度を導入した。同様に勤務時間が短縮される分、給与も減る。

 労働基準法では、労働者に対して、「少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与える」こととしており、「変形労働時間制度」では「一定期間を平均し、1週間当たりの労働時間が法定の労働時間(40時間)を超えない範囲内において、特定の日または週に法定労働時間を超えて労働させることができる」としている。

 つまり、政府が検討している「選択的週休3日制」は、労働基準法などの法改正を行わなくても“企業の努力”によって実施できるものであり、政府が骨太方針にも、「企業に要請」という形で盛り込まれることになる。

 選択的週休3日制の導入が、自民党の一億総活躍推進本部が主張する「育児や介護と仕事の両立」や、経済財政諮問会議で出された「働きながら学べる環境」の実現、あるいは兼業・副業に結び付くかは、まったくの未知数だ。

 むしろ、選択的週休3日制が“事実上の休業”のように使われ、収入減となり、減収分は兼業や副業で自ら儲けろといった形で“悪用”されないように、十分な検討が必要だろう。

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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最終更新:2021/04/22 07:00
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