『愛の不時着』はなぜ売れたのか? 韓国ドラマを次々ヒットさせるスタジオドラゴン「少年ジャンプ」的必勝パターン
#映画 #ドラマ #Netflix #韓国映画 #産業医と映画Pによる配信作品批評「ネフリんはほりん」
サブカル好き産業医の大室正志とB級映画プロデューサーである伊丹タンが、毎回ひとつのVOD作品を選んで、それぞれの立場から根掘り葉掘り作品を掘り尽くす本連載。
今回のテーマは『悪霊狩猟団: カウンターズ』(以下、カウンターズ)。前編では作品について触れたが、この後編ではカウンターズから見る、日本と韓国の映像業界の違いをふたりに考察してもらった。
蓄積されるヒットさせるノウハウ
――カウンターズの制作会社は『愛の不時着』を大ヒットさせたスタジオドラゴンです。
伊丹 そこが本作の一番のポイントかもしれないですね。スタジオドラゴンはストーリーの強度を高める企画を、グローバルマーケットで作ることに慣れてるから、その文法がカウンターズでも炸裂している。
大室 日本のドラマ制作とどう違う?
伊丹 韓国のドラマコンテンツは日本みたいに局の主導じゃなくて、制作会社が企画からファイナンス、制作をしてプラットフォームに売るんだよ。つまり自分たちでリスクを背負ってるから、確実に利益を出さなきゃいけない。カウンターズのアクションシーンを見てても、1話にかける予算が日本の2~3倍あると思うんだけど、その大きな予算を回収できる作品を制作するノウハウが、スタジオドラゴンにはあるんだろうね。
――なぜスタジオドラゴンはそれができるんですか?
伊丹 スタジオドラゴンの株式構成を見ると、Netflixも出資してますね。Netflixへの配信が前提になったことによって、国内ローカルの規模じゃないスケールの作品に携われる。それに、Netflixは前回話したとおり、莫大なマーケティングデータを抱えてる。作品を配信すればしただけフィードバックがあるから、クリエイターも作品を作りながら成長することができるんじゃないかと思う。クリエイターも育つし、こうすれば当たるという必勝パターンがどんどん蓄積されていくから、今後スタジオドラゴンの打率はますます高くなっていくんじゃないかな。
一方で、日本のドラマは予算がどんどん縮小していってる。深夜ドラマは低予算ながら多様性を出してるけど、コアでサブカルチックな作品ばかり量産されても全然グローバルにならない。『深夜食堂』シリーズみたいに突き抜けるものもありますが。
大室 それはたまたまで、ヒットの再現性は生まれないよね。日本でその必勝パターンを持ってるのは「週刊少年ジャンプ」(集英社)だけだね。
伊丹 まさに。ジャンプはそのノウハウを持った上で今一番攻めているから、新連載が始まろうと、編集方針で勝ちパターンの試行錯誤ができている。
大室 『ドラゴンボール』のノウハウを『NARUTO -ナルト-』に生かして世界的にヒットさせたみたいにね。全然違う作品だけど共通点もある。もう集英社がどっかと組んでドラマ制作会社を作っちゃえばいいじゃん。
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