『悪霊狩猟団: カウンターズ』は韓国版『呪術廻戦』!? 復讐、家族、学園、ミステリー…全部のせで感情を揺さぶる韓国エンタメの手法
#Netflix #愛の不時着 #韓国映画 #ゾンビ #産業医と映画Pによる配信作品批評「ネフリんはほりん」
韓国ドラマは長いからこそテーマを複数据える
――能力や敵キャラの個性は日本のマンガやアニメのほうが強い印象ですね。
伊丹 だから今回改めて、韓国は感情のドラマを作るのに特化してるのかなって思った。
大室 それに、パルクールアクションを始め、復讐、家族、チーム、学園、ミステリーみたいに、いろんなジャンルをひとつの作品に詰め込むのも韓国ドラマの特徴だね。
伊丹 そうそう。感情のドラマとして成立する要素を“全部乗せ”している。さらに両親の事故死や足の障害、祖母の介護といった主人公のバックグラウンドを序盤でめちゃくちゃしつこく丁寧に描いて、視聴者がキャラに対して愛着を持てて感情的に面白いと思える構造を自覚的に作っていたりと、韓国映像業界の底力を見せられた感覚。
大室 カウンターズは約70分×16話だし、総じて韓国ドラマは良くも悪くもすごく長い。日本のドラマは約45分×9~10話だからワンイシュー(ひとつのテーマ)で大丈夫だけど、長い韓国ドラマは『梨泰院クラス』みたいに、テーマがいくつもないと、視聴者が脱落しちゃうんだろうね。
――カウンターズは約19時間、日本のドラマは長くても7時間半。確かにテーマがひとつではもたなそうです。
大室 そうなんだよね。とはいえ、カウンターズは記憶喪失も大きな舞台装置になってるけど、医師の立場から言わせてもらうと、世の中にそんなに記憶喪失いないから! って感じ(笑)。今の韓国と昭和の日本のエンタメは、記憶喪失という設定を安易に使いすぎだね(苦笑)。
伊丹 あとは財閥だったり復讐モノの要素は、韓国ドラマは必ず入れてくる。
大室 金持ちの息子に嫌なヤツがいるのも定番だね。
伊丹 スペイン発のシリーズ『ペーパー・ハウス』みたいに、チームアイコンとしてみんなが同じジャージを着たりもするし、そういう意味ではクリシェ(定型的な筋書きや設定)がごった煮になった作品。それでいてテーマがとっ散らかってるんじゃなくて、キャラ背景も含めてちゃんと深堀りされてるからこそ、成立する。日本のドラマは、主人公以外のキャラや要素を深堀りするよりも、事件主義。事件を起こして物語を展開させる傾向があるね。
大室 日本のドラマでいろんなジャンルや要素をひとつの作品に詰め込むことはあまりない? 坂元裕二さんが脚本の『カルテット』(17年放送)なんかはそれに近かったけど。
伊丹 日本のドラマはワンイシューが基本で、こういうごった煮はそれをよしとされる作家性がないとストーリーが散漫になって、ただまとまらないだけの凡作になりがちだから、局も怖がってなかなかやらせない。近年の韓国作品はそこに挑戦してしっかりと描けてるから、作劇理論的には多様な人間のありようを普遍性が感じられるところまで掘り下げていて、結果、日本よりもグローバルで評価されていると言わざるを得ないね。
大室 なるほど。じゃあ次回は日本と韓国の映像業界の違いについて考えていこうか。
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