「シン・エヴァ」は「父看取り」の物語―絶対的権威はもういらない? エンタメ界に流行する「父殺し」の消失
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現代の父性はマツコにある!?
80年代の物語作品には父性を倒してカタルシスを得る作品が多くある反面、SFやアニメでは母性を中心テーマに扱っていた作品も少なくない。そもそもエディプスの神話は父殺しを達成して母親と懇ろになりたい息子の話だが、エヴァにおける母性の描かれ方について大室氏は次のように解説した。
「ざっくり言うと、父性が『お前がそうは言っても、社会はそんなに甘くない』といった相対化のイメージなのに対し、社会的評価など関係なく絶対的な味方をしてくれる融合のイメージが母性なんですよね。ただ現代では分かりやすい父性母性の役割分担を描くことが難しい。少なくともとがった物語として描きにくい面はあるでしょう。だからこそ、“風の時代”的なマイルドスピリチュアルの話も近年増えているのかもしれません。風の時代のコンセプトは社会的権威(≒父性)の否定ですので。スピリチュアル的思考は社会的評価によらない自己肯定にはある程度有効です。またそれが連帯することで自我の境界線をなくし、自分と他人を隔てる疲れなどから解放される融合の気持ち良さがあります(テレビ版エヴァの最終回のように)。ただこれが行き過ぎると精神世界の気持ちよさから帰ってこれないという副作用もあるのですが……」
『とはいえ社会は……』と相対化してもの言う存在である父性と、『そうは言ってもお前だけは……』と全肯定してくれる存在である母性。大室氏はこうした従来の父性・母性的のモデルは、亜系としてしか生き残れないと語った。
「父性的な立場から物申して許されるのは、いまやマツコ・デラックスさんくらいしかいません。少しアイロニカルな言い方ですけど、普通のおじさんが言ったら、ポリコレ的にアウト。現代の父性はおそらく、マツコさんにあるんですよ」
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