「PPAP」は百害あって一利なし!? 日本社会に意味不明な「メールしぐさ」が蔓延したワケ【クロサカタツヤ×大泰司章】
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「PPAP」は相手に対して丁寧な作法だと思っている人たちがいる
クロサカ 日本企業のIT化やデジタルトランスフォーメーションが遅れている理由はいろいろありますが、「PPAP」を止められないことの背景事情は間違いなくその理由のひとつですよね。そもそも、なぜ「PPAP」がここまで広がってしまったんですか。
大泰司 先ほど、企業の方が「PPAP」を欲しがっていると言いましたが、その理由として「プライバシーマークを取得するために『PPAP』をやらざるを得ない」と話す人が多かったんです。実は、「PPAP」を言い始めた当初、私自身がプライバシーマークを運営している団体であるJIPDECの職員だったんですが、内部で確認してもそんなこと言ってないんですよ。
クロサカ JIPDECもわざわざ、「PPAP」を「以前から推奨していない」という公式見解を発表していますよね。
大泰司 メールソリューションベンダーが押し売りしているわけでもなく、さっき言った通り実は止めたがっている。プライバシーマークの審査機関も、セキュリティ関連のコンサルタントも、私の知る限り「PPAP」が必要だと言っている人はいなかった。
クロサカ まるで幽霊みたいですね。もちろん、誤送信などによる情報漏えいに対して、それを防ぐために対策することは正しいです。そこから、いろいろとボタンの掛け違えが続いていった結果なのかもしれません。
大泰司 ある会社と話していて気がついたのは、「PPAP」は相手に対して丁寧な作法だと思っている人たちがいるんですよ。昔、紙しかなかった時代には、大事な書類は裸ではなく風呂敷で包むことが作法だった。「PPAP」もそれと同じで、セキュリティ的には意味がないけれど、大事な書類を裸で渡さないという作法。ところが、今となってはそのやり方は過剰包装と見なされるので、変えないといけない。だから、企業にアドバイスするときも「『PPAP』は最初から間違えていた」と言わないようにしています。
クロサカ 正しいことだけが、正しいやり方というわけじゃないんですね。「PPAP」が広がった根本原因は不明ですが、それでも一度は社会に定着したことは事実です。そうやって定着したものを取り除くのは大変ですから。乱暴にやろうとすると、むしろ激しく抵抗しますよね。
大泰司 北風と太陽じゃないけれど、北風じゃ剥がれない。だから、「PPAP」を厳しく糾弾する人もいますが、それだけでは変わらないと思います。非常にありがたいことではあるのですが。
クロサカ 脱「PPAP」というか、別のソリューションのメリットを優しく説かないといけない。
大泰司 「PPAP」を導入している企業は、それなりに理由があってやっているので、いきなり外からダメだと言われても変われないんですね。一度できた商習慣や社内規則は、現場がおかしいと思っても、それを言いだせないし、言いだしても変わらないと思い込んでしまっている。でも、そういう古い世代と古い企業が、頑固な古い習慣や規則を守り続けると潰れてしまう。
クロサカ 企業だけでなく日本の各部分が、限界ギリギリのところでこらえていた。それが、このコロナ禍によってあからさまになって、古いものがそぎ落とされている。
大泰司 19年の段階でパンパンに膨れあがっていて、きっかけがあれば破裂するような状況だった。そこにコロナという針がプスッと刺さった。
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