新型コロナにiPS細胞が効果―京大と理研の研究グループが発表 政府はさらなる支援を
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京都大学iPS細胞研究所と理化学研究所を中心とした研究グループが4月7日、ヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)を用いることで、既存薬剤のウイルス抑制効果を実験。結果、新型コロナウイルスとエボラウイルスに対して抗ウイルス作用を持つ薬剤を発見したと、発表した。この研究結果は、欧州科学誌「FEBS Open Bio」に発表された( https://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/news/210407-000000.html )。
実験はiPS細胞とRNAウイルスの一種であるセンダイウイルスを用いて感染症モデルを構築し、抗RNAウイルス活性を呈する既存薬約500種類のスクリーニングを行った。心血管循環や中枢神経系への影響が少ない薬剤を選択し、高分化型ヒト肝癌由来細胞株であるHuh7細胞におけるエボラウイルス、アフリカミドリザルの正常腎臓由来細胞株であるVero E6細胞における新型コロナウイルスに対する抗ウイルス効果を評価した。
この結果、ラロキシフェン(Raloxifene)を含む選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)は、エボラウイルスと新型コロナウイルスに対して抗ウイルス作用を示した。また、ピオグリタゾン(Pioglitazone)も新型コロナウイルスに対して抗ウイルス作用を示し、さらに、ラロキシフェンとピオグリタゾンは、Vero E6細胞において新型コロナウイルスに対して相乗的な抗ウイルス作用を示すことが判明した。
加えて、SERMが新型コロナウイルスの宿主細胞への侵入ステップを阻害することも明らかになり、これらの既存薬はRNAウイルスに対する宿主細胞の感受性を調節し、抗ウイルス作用を示すことが明らかとなった。
ラロキシフェンは閉経後の女性の骨粗鬆症予防に用いられ、ピオグリタゾンはチアゾリジン系の経口血糖降下薬で、両薬剤ともすでに実用化された既存薬。
また、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質を有する疑似型水疱性口内炎ウイルス(VSV)を用いて、SERMが新型コロナウイルスの宿主細胞への侵入も阻害するかどうかを検討した。SERMであるラロキシフェン、トレミフェン(Toremifene)、クロミフェン(Clomifene)は、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質(S)を持つ疑似型VSVの感染を阻害したが、VSV糖タンパク質を持つVSVではその効果は認められなかった。このことから、SERMが新型コロナウイルスの宿主細胞への侵入ステップを阻害することが判明した。
トレミフェンは乳癌治療薬として、クロミフェンは排卵誘発薬として無排卵症または排卵過少症の治療に用いられている既存薬。
同研究所では、ヒトiPS細胞とセンダイウイルスを用いた化合物スクリーニングを実施。さらにエボラウイルス、新型コロナウイルスに対する評価を行なうことによって、複数の異なるウイルスと宿主細胞の組み合わせにおいて、RNAウイルスに対する宿主細胞の感受性を調節し、抗ウイルス効果を持つ既存薬が判明した。
これによって「これらの薬は、今後出現する新たなRNAウイルス感染症に対しても治療効果を発揮する可能性があり、複数のモデルで慎重に有効性とそのメカニズムを明らかにすることにより、臨床への応用が促進されることが期待される」としている。
今回の発見は、新型コロナウイルス対策として“朗報”であることは間違いない。しかし、最新技術の実用化には膨大な資金と時間が必要になる。政府は実用化実現に向けた十分な支援を行う必要があろう。
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