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那須川天心、TBSが囲い込みに成功? ボクシング転向宣言で弾く算盤勘定

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那須川天心(@tenshin.nasukawa)

 キックボクシング界のスター・那須川天心が、キックボクシングを引退してボクシングに転向することを発表した。これまで44戦無敗のチャンピオンの挑戦はさらなる夢の実現なのか、はたまた無謀な挑戦なのか。

 その発表は唐突だった。10日放送の『炎の体育会TV』(TBS)に出演し、「ピンポン玉避け」「巨大ダルマ落とし」といった企画に挑戦した那須川。課題を次々とクリアし、抜群の運動神経を見せつけた彼は番組のエンディングで、来年3月にキックボクシングを引退し、ボクシングへと転向すると宣言した。

 2018年にボクシング界のスーパースター、フロイド・メイウェザー・ジュニアとボクシングルールで対戦した際は、3度のダウンを奪われてTKO負けを喫した那須川。似て非なる競技への転向など可能なのか?

「キックボクシングからボクシングへの転向は、ムエタイ(タイ式キックボクシング)が国技のタイの選手の十八番です。センサク・ムアンスリンはムエタイのチャンピオンからボクシングに転じ、わずか3戦で世界タイトルを獲りましたし、辰吉丈一郎、西岡利晃、長谷川穂積らとの激闘で知られるウィラポン・ナコンルアンプロモーションもムエタイ出身で、4戦目に世界チャンピオンになりました。ボクシングとムエタイを行ったり来たりして、どちらの世界でも圧倒的な強さを誇ったサーマート・パヤクァルンという怪物もいます。つまり転向は可能ということです。

 那須川vsメイウェザーは那須川の惨敗でしたが、メイウェザーはハードルが高すぎて参考にならない。那須川の左パンチはメイウェザーを本気にさせましたし、日本人の元・世界チャンピオンはこぞって那須川の才能に太鼓判を押しており、日本チャンピオンならすぐにでもイケるでしょう」(スポーツ専門誌の格闘技記者)

 強い相手を求めるのは“戦う男”の習性ということか。那須川は挑戦の理由として、「自分がゼロからの挑戦者になれるボクシングの道を次のフィールドとして選んだ」と語っているが、当然“お金”のことも計算には入っているはずだ。

「ボクシングのファイトマネーは、その試合を見たい人がどれだけいるかで決まるので、世界チャンピオンでも100~200万円しか稼げない選手もいれば、ノンタイトル戦でもっと稼ぐ選手もいる。那須川は話題性抜群なので、村田諒太のデビュー戦と同レベルの1000万円前後のファイトマネーを取れるでしょう。

 また、基本的にマッチメイクを自力でやるのもボクシングの特徴で、嫌な相手を避けながらランキングを上げたり、“噛ませ犬”とばかり試合を組み、無敗記録を継続させて話題作ったりするやり方もある。セコいように見えますが、大事に育てるのも大切なビジネス戦略です。まずはそういった試合を3~4戦こなして、徐々にビッグマッチへというプランでしょう。何せ那須川はまだ22才ですからね」(同上)

 ボクシングは時に命を落とすこともあるほど過酷だが、1試合で数十億円、場合によっては数百億円を手にすることもあるハイリスク・ハイリターンのスポーツ。そこには色々な“大人の事情”も当然関わってくる。

「那須川はこれまでフジテレビが中継するRIZINに出場してきましたが、今回のボクシング転向がTBSの番組で発表されたということは、TBSが囲い込みに成功したということ。これだけでも相当な額のお金が動いたはずです。

 TBSのボクシング中継には4階級王座の井岡一翔がいますが、那須川とはウェイトが違いすぎてマッチメイクは微妙。一方、無敗の3階級王者の井上尚弥ならウェイトは近いが、井上の放映権はフジ。この2人が相手なら、辰吉丈一郎vs薬師寺保栄戦をしのぐ史上最高額のビッグマネーが動きますが、そこまでまとめきれるかが関係者の腕の見せどころでしょう」(キー局関係者)

 ただ、そういった流れに乗る大前提は、組まれた試合に勝ち続けること。2人合わせて3億円以上を手にした辰吉vs薬師寺の試合をしのぐビッグマッチが、遠からず見られるかもしれない。

石井洋男(スポーツライター)

1974年生まれ、東京都出身。10年近いサラリーマン生活を経て、ライターに転身。野球、サッカー、ラグビー、相撲、陸上、水泳、ボクシング、自転車ロードレース、競馬・競輪・ボートレースなど、幅広くスポーツを愛する。趣味は登山、将棋、麻雀。

いしいひろお

最終更新:2021/04/14 15:00
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