『青天を衝け』磯村勇斗が演じる徳川家茂の激動人生──愛する人を殺害? “性教育”の末に堕ちた悲恋の顛末
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──歴史エッセイスト・堀江宏樹が国民的番組・NHK「大河ドラマ」(など)に登場した人や事件をテーマに、ドラマと史実の交差点を探るべく自由勝手に考察していく! 前回はコチラ
前回の『青天を衝け』は、珍しく(?)ハイペースで話が進みました。主人公・渋沢栄一(吉沢亮さん)と、尾高千代(橋本愛さん)がついに結婚。恋に破れた渋沢喜作(高良健吾さん)ですが、後に妻となる女性・よし(成海璃子さん)と出会い、驚愕の猛スピードで、気持ちを切り替えてしまいました。
一方、江戸城でもさまざまな政変がありました。
第13代将軍・徳川家定(渡辺大知さん)が、唐突な死を迎えたことは一番の出来事だといえるでしょう。『青天~』の主人公は渋沢栄一であり、彼の91年に及ぶ長い生涯を描かねばならないため、渋沢に直接関係のない人物の描写はカットされるのはやむを得ないにせよ、かなり唐突でしたよね。
残念ながら『青天~』の家定には、菓子作りが趣味という印象しかありませんでしたが、史実でも開国に揺れる時期の将軍としては、能力不足であったかもしれません。幕末の大名・松平春嶽は、「凡庸中の最も下等」などと家定を酷評していますから。
また、『青天~』では描かれませんでしたが、アメリカが派遣してきた役人であるタウンゼント・ハリスと面談した際の家定は何を思ったのか、「首を左に大きくひねって、右足を何度か踏み鳴らした」後、朗々とした声で立派な挨拶を述べました。壊れかけのロボットのような不気味さを感じさせるエピソードです。
「病んだ幕府」の象徴のようであった家定が亡くなり、紀州家から迎えた若き徳川家茂の新将軍就任は、江戸城関係者に少なからぬ安堵をもたらしたと推察されます。
この時、徳川家茂はまだ13歳の若さで、実際の政治は井伊直弼らが引き続き執ることになりました。ドラマにも前回、家茂が初登場しましたが、磯村勇斗さんが演じるということで、ネットでも話題になりましたよね。
史実でも、誠実な人柄の家茂は人気が高く、その将軍就任は大きな話題となりました。
ふだん皮肉屋の勝海舟も「(家茂は)御若年といえども真に英主の御風あり」(=お若いにもかかわらず、名君のオーラが出ている)と、評したほど。前将軍がパッとしなかった分、期待値がものすごく高かったともいえますが……。
史実の家茂は、けっこうな苦労人かもしれません。彼が実母・実成院(“じつじょういん”と読む)のお腹にいるうちに、実父で、紀州藩主だった徳川斉順はなくなりました。
実成院は家柄の高い女性でしたが、どうも酒が好きすぎて、ハッキリいうとアル中気味で問題行動が多く、あまり良い話がありません。当時の大名家は、生母といえども育児のすべてを取り仕切るわけではありませんが、誠実で人に好かれる少年となった家茂は、母親の悪い噂を反面教師にして育ったのかもしれません。
なつかしのフジテレビの歴史ドラマ『大奥』(2003)では、野際陽子さんが演じていたハチャメチャな実成院のことを、覚えておられる方もいらっしゃるでしょうか。
フジテレビの『大奥』では、年頃になった家茂に性教育を施さねばならない、ということで、酔っ払った実成院が吹き矢をして(!)、矢が当たった女性が、家茂の「はじめての相手」を“お勤め”させられ、その後は側室に正式になることは許されず、大奥を出ることも許されず、死ぬまで飼い殺しにされるという強烈なシーンがありました。
史実はここまでめちゃくちゃではなかったものの、やはり家茂の性教育に関する“裏話”はあったようです。
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