有吉弘行の守護と防衛「だから恥の多い人生になっていくよ」
#夏目三久 #マツコ・デラックス #有吉弘行
「北海道のコミュニティラジオやってるとき思い出すだろ?」
ところで、有吉はとにかく芸能情報に詳しい。番組を見ていると、彼はゲストや話題などから連想される芸能情報を随所で細かく挟んでいく。それにうまくノッたりツッコんだりしてくれる共演者がいる番組、たとえば『有吉ぃぃeeeee!』(テレビ東京系)では、芸能情報の挿入率が特に高い。数が多いぶん、くだらなさの度合いも高い。
たとえば28日の放送では、高級腕時計が倍近く値上がりしたため盗まれるのが怖くてつけられないという田中卓志(アンガールズ)に対し、有吉は「石田純一さんみたいに」と言う。石田がイタリアで新婚旅行中に500万円の腕時計を奪われたという話をふまえたひと言だ。これに「イタリアじゃないからそんなことはないよ、都内は」とトシ(タカアンドトシ)が丁寧にツッコむ。
あるいは、グラビアアイドルや女優として活動するゲストの大原優乃を、タカアンドトシのトシが「大原優乃ちゃんでーす」と呼び込むと、名前を掛けて「クワバタオハラちゃんだ」とボケる。さらに「弟と仲良しなんだよね」と大原に関する情報を挟む。
背の低い円柱状のものを見つけると、それを漫才のマイクに見立てて「えー、どうも囲碁将棋でございます」と、共に180cm超えの高身長コンビ、囲碁将棋の名前を出してボケる。手の消毒液を首元に香水のようにつけてトシに「コロンじゃないっすよ」とツッコまれると、「コロンをたたいて~」と口ずさみ、アンガールズ・田中とCOMPLEXの『恋をとめないで』を歌い始める。
そして、高級ホテルの料理を共演者と食べていると、「北海道のコミュニティラジオやってるとき思い出すだろ?」とゲストのトム・ブラウンに呼びかける。呼びかけられた側も「なんで知ってるんですか? 『さっぽろ村ラジオ』のことなんで知ってるんですか?」と、かつて2人がパーソナリティを務めていた北海道のコミュニティラジオのことまで知っている有吉に驚きを隠せない。
有吉はこんな風に、番組の端々に細かい芸能情報を挟んで状況を笑いに変える。そして、その膨大な情報をバックボーンに、いわゆる“あだ名芸”の頃から続く彼の“テレビ批評芸”と呼べるようなものが繰り出される。
先週でいえば、1日の『櫻井・有吉THE夜会』(TBS系)で、ゲストのYOASOBI・Ayaseに対し「30年後はELT(Every Little Thing)みたいになっていくんでしょ? いっくんみたいにならないでよ?」とツッコんでいたりとか。熟練の司書のように、有吉は自分の頭の中に構築された芸能界に関する膨大なアーカイブの中から、関連する情報を瞬時に引き出してくる。そのレファレンス能力に改めて驚く。
そして、そんな有吉だからこそ、芸能人としての自分のテレビでの映り方もふまえて、結婚までの道筋を慎重に歩んできたように見える。
今回の突然の発表に対し、芸能人だけでなく、ワイドショーがマイクを向ける街の人からもしばしば聞かれるのが「有吉らしい」という声だ。結婚について公式発表だけを淡々と行い、後はおおむね普段どおりに過ごす。そこに一般の人も「有吉らしさ」を自然に読み取ってしまっている。山里亮太が結婚したときには、「ホントは優しい」とか「ホントは気配りができる」という評価が湧き起こり、それに対して“掌返し”というような見方もあったわけだけれど、今回はそんな「優しい」「気配りができる」という周囲の評価が「ホントは」を外してストレートに発信され、ストレートに受け止められているようにも感じる。
それもこれも、彼がこれまでの言動で長い時間をかけて自身の“キャラ”の背後にある“人柄”のようなものを浸透させてきたからだろう。
おそらく今後、有吉は「有吉らしく」、結婚生活について自分から話すことはあまりないはずだ。夏目と番組で共演したり、CMに出たりすることもまずないだろう。そして、そんな彼を改めて、私たちは「有吉らしい」と受け止めるだろう。もし仮に共演とかがあったりしても、次の言葉が効いてくる。
「だから恥の多い人生になっていくよ、お互い。だけどそれは、成長だと」
もちろんそれが本当に彼が備える“人柄”なのかは別にして、いつの間にか私たちは彼の“人柄”を、「有吉らしさ」をとてもよく知っていた。そのことを改めて感じる結婚発表だった。その「有吉らしさ」が、何よりも周囲の喧騒から2人を守るのかもしれない。
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