日本初の女流近代作家・樋口一葉の作品を映像化した『にごりえ』 現代でも考えさせられる“女性の生き方”の描き方に感動
#映画 #俳優 #キネマ旬報 #映像化 #にごりえ #樋口一葉
こんばんは!宮下かな子です。最近、色々な方から絶賛の声を耳にしていた西川美和監督の『すばらしき世界』、やっとやっと観に行けたんです!
もう、もう……! 宮下、久しぶりに席から立てなくなる現象が起きました。
マイベストムービーに堂々ランクイン、この先もずっと心に残り続ける作品と出会えました。観終えて早々に本屋さんへ駆け込み、制作過程が書かれているという西川監督の著書『スクリーンが待っている』を購入。ゆっくり読み進めながら、まだまだ映画の余韻に浸っております。
本の中で西川監督が、この映画の原作である佐木隆三さんの『身分帳』との出会いについて語っていらっしゃるのがとても興味深くて。
“「よく書き込まれた小説を映画化することの勝機のなさ」にビビり続けていた”という西川監督が、この作品に出会った時、その恐れを忘れていた、と。
今、原作ものがどんどん映像化されている時代。私も小説や漫画が大好きなので、「え~この作品映像化するの!」ということもよくあって、原作への思い入れがある方のお気持ち、すごく分かるんです。対して漫画に登場するキャラクターを演じることも多々あり、できる限り原作に寄り添ってやらせて頂くのですが、自分が加害者にもなり得る立場。とても複雑な思いなのですが、私も体現する立場として、もっともっとできることやらなきゃな~、と、西川監督の想いに触れながら考えています。
さて、今回ご紹介するのも、あの有名な原作を映像化した作品。今井正監督の『にごりえ』(1953年松竹)を選びました。樋口一葉さんの短編小説3遍が原作となっています。
今井正監督作品を観るのは今作が初めてとなりますが、この50年代で、他に何作もキネマ旬報の日本映画ベスト・テン入りを果たしていて、とても気になる監督さん。しかもなんとこの作品、1953年の同賞で私の大好きな小津安二郎監督『東京物語』を押さえてのベスト1位ではないですか! それに続くのが溝口健二監督『雨月物語』、成瀬巳喜男監督『あにいもうと』ですと……! 樋口一葉の世界観をどう映像で表現しているのか、事前情報で大いに期待を膨らませながら鑑賞しました!
〈あらすじ〉
離縁を決意し実家へ戻ってきた女性の一夜を描いた「十三夜」。貧しい義父母にお金を頼まれたものの、奉公先の女主人に借りられず、黙って持ち出そうか葛藤する女中の姿を描いた「大つごもり」。人気酌婦と、そこに通い詰め落ちぶれた男、その男の妻の鬱々とした想いを描いた「にごりえ」。樋口一葉の短編小説を、文学座の役者総出演で彩ったオムニバス作品!
まず、「文学作品の映像化って心配だな~」と思っている方、ご安心ください。原作の世界観が存分に満喫できる作品となっているんです! 樋口一葉の小説は、文章のリズム感が魅力の一つだと思うんですよ。一文が長く句読点が少ないので、慣れるまで非常に読みづらいんですけど、声に出して音読すると、案外すっと言葉が入ってくる、気持ちの良い文章なんですよね。脚本担当は水木洋子さん、『にごりえ』合わせ、ベストテンで1位となった作品の脚本を5本手がけている方です。原作の魅力がしっかり生かされた脚本になっていて、耳で聴いて抜群の心地良さ!その台詞を発する文学座の役者陣もこれまた凄いのですが。小説の世界が、立体的に形を成したような感動を味わいました。
時代は明治。娘、母、女中、妻、酌婦などさまざまな立場から、この時代を生きた、肩身の狭い女性達に寄り添って描かれています。
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