『鬼滅の刃』成功は必然だった―先行投資と芸能界重鎮へのパイプがつくり上げた“ソニー帝国”の軌跡
#新型コロナウイルス #存在感 #SME
山口百恵にキャンディーズ、郷ひろみ&松田聖子まで! アイドルソングで巨大に
1968年3月には、ソニーと米CBSとの合弁契約に基づき、CBS・ソニーレコード株式会社として設立された同社は、米人気フォーク・デュオ「サイモン&ガーファンクル」や当時のジャニーズ事務所の人気グループ「フォーリーブス」の新譜などを手掛けて洋楽、邦楽のレコードのカッティング及び生産を開始。
その後、カセットテープソフトやビデオソフトの生産、株式会社EPIC・ソニーの設立などとともにアーティストの発掘・育成にも力を注ぎ多くの人気アーティストを世に放つ。
元スポーツ紙の芸能担当記者は振り返る。
「日本コロンビアからCBS・ソニーに移籍した酒井政利さんのプロデュースにより、南沙織やキャンディーズ、山口百恵さんらがデビューして人気を集めました。百恵さんのデビュー当時のキャッチコピーが『大きなソニー、大きな新人。』だったことを考えると、オーディション番組『スター誕生!』(日本テレビ系)の出身で、すでにある程度の知名度はあったことを加味しても、CBS・ソニーサイドの並々ならぬ期待の大きさがうかがえますよね」
80年代に入ると国民的ヒット曲が次々と誕生する音楽ブームの到来やCDの普及などにより業界全体が好景気に包まれる中、業界の先頭をひた走るソニーの勢いも加速する。
大手レコード会社のベテラン社員は振り返る。
「80年代前半のソニーを支えたのは松田聖子さんと郷ひろみさんでしょう。その後も今や伝説となっている『CBSソニーオーディション』出身の尾崎豊さんや大江千里さん、HOUND DOG、それに渡辺美里さんやTM NETWORKなどがデビューして注目を集めました。この時期になると、音楽業界内におけるソニーの存在感が大きすぎてCBS・ソニー vs EPIC・ソニーといったソニー内部の競争がそのまま業界の覇権争いになっていました。ちなみに当時のソニーは、例えば渡辺美里さんの楽曲を大江千里さんやTM NETWORKの小室哲哉さんが手掛けるなど、才能あふれるアーティストを“出役”としてだけでなく“裏方”としても活用することで、作詞、作曲といった楽曲の制作面を含めてすべて自社内でまかなおうとする傾向があり、そうしたやり方にも目新しさを感じましたね」
88年にはCBS・ソニー、EPIC・ソニー、CBS・ソニーレコード、ソニービデオソフトウェアインターナショナルの4社を吸収合併。91年に株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメントと商号変更して現在のSMEの基盤ができる。
そして90年代に入ると音楽シーンには、ディスコブームの中で「ジュリアナ東京」や「マハラジャ」のコンピレーションアルバムなどをリリースし、ダンスミュージックをキッカケに若者層を中心に支持を集めた「エイベックス」、ドラマをはじめとしたテレビ番組や映画などとのタイアップ戦略でヒット曲を世に送り出した現在の「ユニバーサルミュージック」が台頭。
ソニーはライバル2社らと業界の覇権争いを繰り広げることになるが、その一方で先を見据えた投資にも余念がなかったという。
前出の大手レコード会社のベテラン社員は語る。
「『鬼滅の刃』のメガヒットなどで注目を集めている子会社のアニプレックスが設立したのは95年のことです。近年は同作や他のアニメ作品、アプリゲームのヒットで売り上げも好調な同社ですが、設立後長きにわたって経営不振が続きました。それでも投資を続けたソニー上層部の胆力と経済力は見事の一言です」
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