就職内定率が急激に悪化、特に女性の雇用環境に打撃―厚労省「大学と連携して支援」
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新型コロナウイルスの感染拡大は雇用に深刻な影響を与えている。非正規雇用者を中心に大量の失業者が発生していることに加え、企業の新卒採用にも大きな影響が出始めている。文部科学省と厚生労働省によると、就職内定率が急激に悪化している。
文部科学省と厚生労働省は3月19日、21年3月に卒業を迎える大学、短期大学、高等専門学校(高専)、専修学校の計112校、6250人の2月1日時点の就職内定状況の調査を発表した。
全体の就職内定率は89.3%と前年同期比で3.1ポイント低下した。同時期の内定率が90%を割り込むのは、16年3月卒以来、5年ぶりとなった。12年3月卒の内定率が77.1%まで低下しボトムを付けた後、一貫して上昇を続けていた内定率が下げに転じた。(表1)
学校種別では、大学が89.5%(前年同期比2.8ポイント低下)、短期大学女子が82.7%(同6.6ポイント低下)、高専が97.1%(同2.9ポイント低下)、専修学校が76.7%(同10.2ポイント低下)となっている。
大学の内定率89.5%という水準は、16年3月卒以来の90%割れだ。アベノミクス以降の景気回復局面で、就職内定率も上昇していたため、20年3月卒が統計開始以来、最も内定率が高かっただけに、新型コロナ禍の影響で21年3月卒の内定率が低下したことは、国内景気が大きく減速したことの表れでもある。
大学の内訳では、男子大学生は88.1%と20年3月卒より2.9ポイント、女子大学生は91.2%と2.6ポイントいずれも低下した。男子大学生の90%割れは18年3月卒以来、女子学生は16年3月卒以来の水準に低下した。
だが、より就職難に直面しているのは、短大女子と専修学校(いわゆる専門学校)だ。
短大女子の内定率は82.7%と前年同期比で6.6ポイントも低下、専修学校は76.7%と同10.2ポイントと、唯一10ポイントを超える大幅な低下となっている。短大女子は15年3月卒以来、6年ぶりの低さであり、専修学校は11年3月卒以来、10年ぶりの低さとなっている。
労働力調査によれば、非正規雇用者の「雇止め」の影響を大きく受けているのは、女性であり、短大女子の内定率の悪化も含め、女性の雇用環境が悪化していることが鮮明になっている。
2008年9月に米投資会社リーマン・ブラザーズの経営破綻により世界的な金融危機が発生した「リーマン・ショック」の影響により、就職内定率は3年間にわたって大きく低下した。11年3月卒を底に回復に転じるが、リーマン・ショック前の水準に戻るのには5年を要した。つまり、新卒雇用への影響は8年間にも及んだことになる。
この就職困難期に当たってしまった新卒者の中からは、多くの非正規雇用者が発生した。日本企業には“新卒神話”が根強く残っており、新卒で正規雇用者として就職できないと、その後、非正規雇用から正規雇用に変更するのは、非常に難しいのが実態だ。
2021年3月卒の内定率の低さは、今後の新卒採用に対する懸念にもつながる。新型コロナ禍の新卒雇用への影響もどれだけ続くかは不透明であり、リーマン・ショック時と同様に、何年にもわたって内定率が低下し、その回復までに10年近くが必要になれば、またぞろ非正規雇用者の増加に結び付くことになる。特に、新卒、非正規雇用を含めて、女性の雇用環境の悪化には十分に注意する必要があるだろう。
厚生労働省は、就職内定率の低下に対して、「大学と連携して学生への就職支援を強化したい」としているが、大学との連携はもより、政府としてより強力な雇用対策を実施に移すことで、多くの新卒者の就職が決まるようにするべきだろう。
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