「朝日系メディア」とは何か? 資本関係では解けない「編集方針」の特徴を探る
#ネットメディア #朝日新聞社 #資本関係
編集長が示す「メディアの編集方針」の影響
――じゃあ、ハフポストやバズフィードは、なぜ「朝日系」と呼ばれてるんですかね。
B氏 結局、資本の問題だけではないということですよね。ここからは門外漢ですが、あえて推測すると、「編集方針」が朝日新聞に通じるような、いわゆるリベラルな論調があるという意味じゃないですか。
その裏には、人の関係もあると思うんです。調べた範囲では、ハフポストの竹下編集長は元朝日、バズフィード元編集長の古田さんも元朝日で、現編集長の小林明子さんは元毎日新聞だけどアエラを経てバズフィード編集部に入ってます。バズフィードニュース編集長の貫洞欣寛(かんどう・よしひろ)さんも朝日からの転職組です。
もちろん編集部には別の新聞やネットメディア出身者もいるでしょうし、朝日新聞社が多くの人材を輩出してきただけなのかもしれません。でも、編集長が示す「メディアの編集方針」の影響って結構大きいんじゃないですか?
――そういえばビジネス インサイダー ジャパンも、朝日新聞社とは資本関係がまったくないけど、元朝日の浜田敬子さんが創刊時の編集長だった。
B氏 浜田さんについてきた元アエラの、ビーガンとかフェミニストとか名乗る人が書く記事が「朝日系」と呼ばれてます。ということは「資本関係がないから“系”じゃない」という反論は最初から食い違ってるんですよ。編集方針が似通ってると読者が認識しているから「系」と呼ばれることは、十分ありうることじゃないですか。
そういえば、鴨川さんの古巣のJ-CASTニュースはどうなんですか。ときどき「朝日系」と呼ばれてますけど、創業者も創刊編集長も現社長も元朝日ですよね。
――彼らはどっちかというと朝日を追い出された人たちだから……。最近の編集長は新卒生え抜きだし、リベラル的な論調も見かけたことはないですよ。それがビジネス上、有利なことなのかどうかは分かりませんが。
「朝日系」の根っこは「日本死ね」なのか
――「朝日系」が資本関係じゃないとすると、どういう論調が「朝日系」と言われるんですかね。Bさんからはどう見えますか。
B氏 日本のリベラルの根っこにあるのは「こんな国もう嫌だ、日本死ね!」じゃないですか。日本の共同体の伝統的な価値観に対する恨みがこもっている。それが「朝日系」と呼ばれる記事かと思います。
――大胆な意見ですが、そういう記事をどう思いますか。
B氏 人間は共同体に生まれ育まれるものだから、自分が属する共同体への愛着や感謝はあって不自然じゃないはずです。アメリカ人はもちろん、ヨーロッパの人たちだってリベラル派を含めて驚くほど自国好きです。
なのに日本のリベラルは「欧米では云々。フランス最高、日本死ね!」とかどうなんですかね。その意味で私は愛国者ですし、「日本死ね」に疑問を感じることはあります。
――言われてみれば「朝日系」と批判されるメディアは、海外やLGBTQなどのマイノリティの視点から、日本の伝統的な共同体の価値観を批判することが確かに多いです。
B氏 日本にだって改善が必要な部分がたくさんあります。現実を踏まえ、不都合があれば変えていけばいい。でも、固有の文化や歴史的経緯も踏まえず、違う場所の価値観やイデオロギーをつまみ食いして「日本は古い」とか言われても、コンプレックス丸出しだし、白けません?
――「日本死ね」というのは、どの程度許容されるべきなんでしょうかね。
B氏 具体的な問題を指摘するものであれば許容して、解決に結びつけるべきものもあると思います。でも中には、個人的な承認欲求を社会への攻撃に転嫁しているだけではと疑いたくなる人たちもいます。そういう人には一読者としてNOを突きつけたい。
欧米バンザイについても、たとえばESGsとかカーボンフリーとか手放しで称賛する記事を見ますけど、欧米に都合のいいルールづくりに従わされているだけではないのか、日本の国益を損なうおそれはないのか、といった疑いの目を持ちながら紹介して欲しいと言いたいです。
そういう広告記事を載せるとメディアが儲かるからといって、無批判に海外の論調に乗っていれば、反日的と攻撃されても仕方ないと思いますよ。
<インタビューを終えて>
哲学者のミシェル・フーコーは、晩年の講義で「顰蹙を買うのを承知で語られる言葉こそが、社会を変える力を持つ」と話したという。批判を恐れては社会を変えられないというメッセージは、いま「朝日系」となじられているネットメディアの人たちを勇気づけるかもしれない。
その一方で、当の朝日新聞社は巨額赤字を生み出し、回復の見込みは立っていない。リストラに着手しているとも報じられ、退職する名物記者も出ている。そんなタイミングで「朝日」がネットの罵倒語となっているところに、あらためて昨今の“いわゆるリベラル界隈”への風当たりの厳しさを感じる。
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