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おくればせながら…

元芸人が「R-1グランプリ2021」全ネタ徹底分析! 圧倒的だった進化を続ける天才芸人「ゆりやんゆりやんレトリィバァ」の生き様

極上の演技力も…「THE W」王者・吉住の敗因はネタ選び?

 5番手は2020年「女芸人No.1決定戦 THE W」で優勝した「吉住」。

 THE Wの時のネタはとても印象的で女性ならではの面白さがあり、コンスタントに笑いを起こすネタだったので、凄い芸人が現れたと思った記憶がある。
 果たしてR-1はどんなネタを見せてくれるのかと期待した。ネタの内容は化け物と少女の心温まる絆の物語かと思いきや、その化け物が村を襲うというもの。

 見終わった時の印象は「ちょっと笑いが起こる演劇」だった。芝居は圧倒的に上手く、セリフにも芸人としてのファニーさがあり、器用さが前面に出ていたが、ネタ自体は、笑える箇所が少なかった。

 前半、若干の小ボケはあったが、主軸となる笑いがほとんど無く、中盤の化け物が村を襲うところで初めて大きめな笑いが起こる。しかしそれ以降も大きく笑える箇所はなかった。

 大きな笑いひとつより、全体的に笑いがちりばめられている方が賞レースでは有利だ。つまりこのネタはR-1向きではない。

 ネタが終わった後のインタビューで「R-1はメチャクチャやっていいと聞いていたので」と言っていたので、本人もあまり笑いが起きていなかった自覚があったのだろう。

 ネタの選択も芸人の技術のひとつであり、間違えると致命傷にもなる。

 6番手は芸人と塾の講師の二足の草鞋で活動する「寺田寛明」。

 この方についても事前情報はなく、講師というキーワードから同じ世代の芸人「大輪教授」を連想した。

 ネタは英文を寺田さんなりに翻訳するという、まさにオーソドックス中のオーソドックス。この手のネタは英文を出すと同時に観客はある程度想像を膨らます、それを越えていくことが難しい。彼の場合は、良い塩梅で観客の想像を超え、あるあるネタも含み、コンスタントに起こる笑いは後半になるにつれて盛り上がり、申し分のない着地であったが、点数は伸びなかった。

 その理由としては、観客が感心してしまうネタが多かったからだと思う。
面白いから笑うというよりは、納得やリスペクト、凄いという感情で起こる笑いであった気がする。

 さらに、翻訳した文章でボケたあと、一言足して次に行くというスタイルだが、その一言単体でも観客の心に突き刺さるほど面白い必要があった。

 フリップネタはフリップをめくると同時にリセットされるので、後半もっとボケが繋がり畳み掛ける展開にしても良かった。

 7番手はお笑いコンビ「かが屋」の賀屋。

 決勝にコマを進めたメンバーの中で知名度は高く、コントに定評があるかが屋賀屋さんのピンネタという事で、観客の期待値は相当高かったはずだ。

 ネタをみると、かが屋のネタを踏襲していると感じた。ボケの乱打というよりは、ひとつの設定ボケをいろんな角度から見せていくようなネタ。

 ファーストステージは慌てた男の「はぁはぁ」という息遣いを主軸にボケを展開していき、ファイナルステージは女性の「オナラ」を軸に物語を進めていった。どちらのネタも着眼点は素晴らしく、ネタの流れも滞らず、スムーズだった。

 残念だったのは、どちらも「オチが弱い」ということだ。暗転するまでネタが終わったと確信出来ないほど脆弱だと感じた。

 ネタの持ち時間が短かったのか、それとも元々そういうネタだったのかはわからないが、途中まで良かっただけに、オチは笑わせて終わるか、落語のような上手い表現をして感心させて終わらせるべきだった。かが屋らしさなのかもしれないが、オチを強くする事が出来るようになればもっとコント職人としての地位を上げられるのではないだろうか。

 8番手は関西で活躍されているという「kento fukaya」という芸人。

 霜降り明星と同期らしいのだが、この方もほとんど情報はない。ただトリプルフリップストーリーという3面フリップを使うという特殊な芸が特徴なのだそうだ。4面を使ったZAZYがいなければもっと希少価値が出たはずだが、フリップ芸をする芸人が増えた今、そういった被りも仕方ないという事だろう。

 絵は気持ち悪さがクセになる独特なタッチで、それだけでも面白い。

 さらに大きなフリップを3面横に並べ舞台を広く使って動き回り、フリップ芸にありがちなこじんまりしてしまう点も解消されている。

 ネタの内容も1面ふり、3面オチのような毎回同じようなパターンではなく、フリップを開く順番を変えたり、映像のように見せたりとかなり手が込んでいて良かった。

 ひとつ気になる点を挙げるとすれば、後半ネタのテンポが上がり、観客を置いてきぼりにした感があった。

 舞台を広く使うという事はお客さんの目線が移動するという事。彼が舞台を右へ左へと移動すれば、観客もそれに付いてくる。最初は集中していても、段々と目線の移動、頭での理解、面白いと感じて笑うという一連の動作にズレが生じて疲れてしまう。

 早すぎてもダメ、遅すぎてもダメ。スピードの強弱も意識しなければならない。お笑いは難しい。

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