キムタクはロールモデルにできないほどの高みへのぼった──ジャニーズ男性アイドル像の変遷(後編)
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──半世紀にわたり、数々の多彩な男性アイドルたちを世に送り出してきたジャニーズ事務所。彼らは時代時代のスーパースターとなり、女性ファンの歓声を大いに浴びてきた。近年は退所のニュースが立て続いているが、今も変わらずジャニタレは“カッコいい”存在なのか? 改めて、その男性像の変遷を徹底的に分析してみたい。前編はコチラ
(サイゾー21年1月号「男性学」特集より一部転載)
もはや手本にならないキムタクはスゴい
──木村拓哉はいまだにカリスマ的な存在とされているように見えます。キムタクが打ち出している男性像、アイドル像に変化はありますか?
田幸 圧倒的なカリスマという存在から、近年はドラマ『グランメゾン★東京』(TBS系、19年)のように同年代の俳優と横並びになり、周りを引き立てる役をするように変わってきています。同時に、ジャニーズ内だけでなく外の若手俳優たちからも、「小さい頃から憧れていた」「共演して、そのストイックさに刺激を受けた」などの声を聞くようになりました。『教場』(フジテレビ系、20・21年)では、自分の出番がないときも若手たちのシーンをずっと見ているそうです。プロ意識が高い彼がいると、スタッフも出演者もみんな緊張してピリッとする。ジャニーズを超えた役者を育てる立場の人になってきていますね。
矢野 『あすなろ白書』(フジテレビ系、93年)のあたりでは身近にいるような感じだったのに、いつの間にかカリスマとして、ピアニスト、検事、レーサーといった憧れの対象となる人物を演じるようになりました。でも今は、ずっと弱みを見せず、失点しないでカッコよく生きていくのはツラい。だから、もっと人間味があって、たまにカッコ悪いけど愛される男性のほうがロールモデルとして機能しています。そうすると逆説的に、「ずっとカッコよさを維持するキムタクはスゴい」と新たにリスペクトされるようになった。つまり、90~00年代は直接的なロールモデルになっていたけど、今はロールモデルにできないほど「キムタクはスゴい」という見方になってきている。
西原 確かに90~00年代は目指せそうな憧れ、今は手が届かない憧れ。リアルではなく異次元の存在っぽい感じもありますね。
矢野 SMAPから最初にジャニーズを退所した新しい地図の3人(稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾)は、ネット番組に進出し、ツイッターを始めて“降りてきた”。その後、中居が抜けて、木村がジャニーズに残り続けることになった。ジャニーズに残るということは、基本的には“降りてこない”ことを意味しています。SNSで一般人とのやり取りも絶対にしない。今っぽくないけれど、今っぽくはない選択ができることが木村拓哉のスゴさ。
──今のジャニーズといえば、先ほども指摘があったようにK-POPとよく比較されます。双方が打ち出す男性像には、どのような違いがあるでしょうか?
西原 東方神起やBIGBANGが人気だった10年代前半頃までは、高身長で筋肉があって男性性を表に出していましたが、その後、細くて肌が白く、化粧を施したジェンダーレスな男性グループが成功している。今でもパフォーマンスの中で軍服をアレンジした衣装を着て男らしさを打ち出すことがありますが、ジャニーズ的なものとK-POP的なものの差はなくなってきているように思います。
田幸 逆に、K-POPにビジュアルを寄せていっているジャニーズもいますね。そっちに走ることを嫌がるファンもいる。
西原 ファンも一昔前は互いにライバル心があったようですが、今はK-POPも好きだしジャニーズも好き、アイドル全般が好きだという緩やかな重なりがありますね。
矢野 K-POPは徴兵の問題がありますよね。知人の韓国人によれば、韓国ではやはり「男は徴兵に行って一人前」というところがあって、軍隊でホモソーシャルな関係を築く。そして徴兵以前/以後という線引きがあるので、K-POPアイドルには男性性はまだ残っているようにも思います。他方で徴兵がない日本のアイドルは、ずるずると30代、40代になる。こうした点が男性像という意味では大きな違いとしてある。
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