郷ひろみからキンプリまで──今も変わらずジャニーズは“カッコいい”存在なのか? 男性アイドル像の変遷(前編)
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ネットをチェックしてBLを自己プロデュース
──メンバー同士がじゃれ合うBL的な要素もジャニーズの特徴です。これはいつ頃から出てきたのでしょうか?
西原 ジャニーズに限らず芸能人をBL的に解釈して楽しむというのは、70年代からずっとあります。その流れの中にジャニーズタレントもいるという形です。
田幸 歴代、誰が一番盛り上がりましたか? SMAPのツートップ(中居正広、木村拓哉)かなという気がするんですけれど。
西原 SMAPとKinKi Kidsですね。彼らがスターとなった90年代は、同人誌がものすごく盛り上がった時代でもありましたし、彼らの関係性はBL的にも注目されました。嵐やKAT-TUNもあるけれど、SMAPのツートップやKinKi Kidsのような「絶対的な2人」とは異なるように思います。
田幸 嵐のわちゃわちゃ感と違って、べったり仲良しではなく仕事の信頼感で結びついている関係性で、ちょっとピリつくところもあるからこそ萌えるんですよね。ベテラン漫才師にも近い関係性があります。
西原 ジャニーズのBL的な要素は、90年代は本人たちは狙っていなかったと思うんですけど、2000年代に入ると、あからさまにイチャイチャが行われるようになっていきました。
田幸 いわゆる“腐売り(BL好きの腐女子に向けたアピール)”ですね。誰と誰の組み合わせが需要があるか、自分たちでエゴサーチしてプロデュースに組み込んでいる。気の回る子が、わざとその2人をくっつけるようなパターンもあります。Hey! Say! JUMPだと有岡大貴が、山田涼介と知念侑李、山田と中島裕翔の組み合わせなどに絶妙なアシストをして、「いい仕事するね、よくわかっているね」とファンは喜んでいます。
西原 ウェブメディアは大きな要因です。かつてはファンとアイドルの間には大きな壁があって、ファンが何を求めているかわからなかったと思いますが、今はダイレクトに通じ合えるようになり、ファンが望むものをアイドルが与えるようになった。それが冒頭で話した特別感が薄まっていることにもつながっているように思います。昔は意図しないところで、たまにドカンと大きい萌えが訪れていました。今は小さな萌えが毎日供給される時代。
──近年、同性愛的な意味とは別に男性ファンも増えてきているように思います。
矢野 ジャニーズに限らず、女性アイドルの女性ファンも増えました。疑似恋愛の対象としてでなく、メンバーの関係性や仕事に取り組む姿勢などに魅力を見いだすことが一般化して、男性ファンも魅力を語れるようになってきている。
田幸 バラエティ番組のイメージが強い関ジャニ∞も男性ファンが多かった。かつては男性も憧れるカリスマ的なジャニーズは木村、山下、長瀬でしたが、そういった憧れとは違う面からファンになる人もいるようです。(後編につづく)
(構成/安楽由紀子)
田幸和歌子(たこう・わかこ)
ライター。1973年、長野県生まれ。週刊誌、月刊誌、ウェブで俳優、脚本家、プロデューサーへのインタビュー記事やドラマコラムを執筆。著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinKi Kidsおわりなき道』(アールズ出版)などがある。
矢野利裕(やの・としひろ)
批評家、DJ。1983年、東京都生まれ。2014年、「自分ならざる者を精一杯に生きる――町田康論」で第57回群像新人文学賞評論部門優秀作受賞。著書に『SMAPは終わらない』(垣内出版)、『コミックソングがJ-POPを作った 軽薄の音楽史』(Pヴァイン)などがある。
西原麻里(にしはら・まり)
愛知学泉大学家政学部講師。博士(メディア学)。編著に『ポスト〈カワイイ〉の文化社会学 女子たちの「新たな楽しみ」を探る』(ミネルヴァ書房、吉光正絵・池田太臣と共編)、共著に『BLの教科書』(有斐閣、堀あきこ・守如子編著)がある。
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