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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > アカデミー賞主要部門総ノミネート『ノマドランド』レビュー
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.627

家賃や住宅ローンは払わないという新しい生き方 自由を求める現代の遊牧民たち『ノマドランド』

アジア系監督が描く米国人ならではの開拓者魂

ノマドは白人の高齢者が多い。有色人種が旅先で車中泊することはできないという実情がある。

 中国出身のクロエ・ジャオ監督は、前作『ザ・ライダー』(17)では現代の米国社会を生きるカウボーイの葛藤を女性監督らしく繊細に描いてみせた。今回はバンで旅を続ける女性・ファーンにかつての西部開拓者たちのフロンティアスピリットを重ね、米国人がもっとも尊ぶ自由を愛する心をスクリーン上に浮かび上がらせている。

 アカデミー賞作品賞、監督賞、主演女優賞、脚色賞など主要部門にノミネートされている『ノマドランド』の対抗馬となっている『ミナリ』も、トレーラーハウスで暮らす移民一家の物語となっており興味深い。

 韓国系アメリカ人のリー・アイザック・チョン監督が撮った『ミナリ』(原題『Minari』)は、1980年代の米国南部アーカンソー州に移住してきた韓国人ジェイコブ (スティーブン・ユァン)たち親子の物語。なかでもインパクトがあるのが、物語中盤から加わる義母のスンジャ(ユン・ヨジョン)だ。スンジャは英語が話せない上に、ハングル文字も読めず、料理も満足にできない。孫たちに教えるのは、もっぱら花札の遊び方とスラング。そんな粗野なおばあちゃんが若い一家の精神的支柱となり、家族は新しい土地に根づこうとする。

 北米大陸をひとりでさまよう『ノマドランド』と違い、『ミナリ』の一家はアーカンソー州の片田舎で土を耕し、何とか定住しようと試みる。こちらも米国という大きな国の特性である人種の多様さ、開拓者たちへのリスペクトが込められた作品となっている。日本時間で4月26日(月)に発表される第93回アカデミー賞は、バンやトレーラーハウスで暮らす名もなき人々に注目したい。

 

『ノマドランド』
原作/ジェシカ・ブルーダー 製作/フランシス・マクドーマンド 
監督・脚本・編集/クロエ・ジャオ 撮影/ジョシュア・ジェームズ・リチャーズ
出演/フランシス・マクドーマンド、デビッド・ストラザーン、リンダ・メイ、スワンキー、ボブ・ウェルズ
配給/ディズニー 3月26日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
c)2020 20th Century Studios. All rights reserved.
https://searchlightpictures.jp/movie/nomadland.html

 

『ミナリ』
製作総指揮/ブラッド・ピット 監督・脚本/リー・アイザック・チョン 音楽/エミール・モッセリ
出演/スティーブン・ユァン、ハン・イェリ、アラン・キム、ネイル・ケイト・チョー 、ユン・ヨジョン
配給/ギャガ 3月19日(金)より日比谷TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
https://gaga.ne.jp/minari/

最終更新:2021/03/19 14:00
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