菅義偉内閣、NTT幹部たちによる総務省官僚接待疑惑は巨大な企業の内部抗争へーー
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“旅行業界のドン”JTB前会長「生き残るため」減資断行の裏
現代で、旅行業界ドンとも称されるJTB前会長の田川博己が、今回やる「減資」についてこう語っている。
「僕が社長でも、会社を守るためだったら、減資をやりますよ。再び旅行してもらえる日が来るまで、生き残るためには、なんだってやる」
2月23日に発表された通り、JTBは資本金を23億400万円から1億円に減資する。その背景について尋ねると、田川は苦渋の表情で、こう釈明したという。
「我々旅行業界は、オイルショックでもリーマンショックでも、国の支援を一切受けずに耐えてきた。ところが、コロナ禍では、旅行の需要が完全に蒸発してしまった。このままでは業界は壊滅します。未曽有の危険なんですよ……」
JTBは20年3月期の売り上げは旅行業界でダントツの1兆2885億円、グループ会社を含めた従業員数は約2万7000人。その巨大企業が、3月31日をもって、税法上は「中小企業」となるのである。
「資本金とは、企業が株主から出資を受けたカネを指す。資本金が1億円以下だと中小企業となる。現在のJTBの資本金は23億400万円。当然、税法上では大企業だ。
今回の減資の目的は、中小企業だけが受けることのできる複数の税制上の優遇、つまり『税逃れ』を狙ったものではないかという指摘がある」(現代)
公認会計士の佐久間裕幸がこう解説する。
「『最も大きいメリットは、外形標準課税の免除です。法人事業税の一つで、人件費などを基準に算出されます』
給与などの人件費は1.2%が企業に対して課税される。資本金1億円を超える大企業のみが対象で、中小企業には課されない。佐久間氏が続ける。
『従業員の数や販管費などから、JTBの人件費は1000億円を超えると推測されます。それを基に試算すると、中小企業化によって、JTBは約12億円分の税金の支払いを回避できる。
JTBの売上高は1兆円を超えますが、店舗の賃料などの営業コストが高いことで収益率は低く、20年3月期の税引き前純利益はわずか56億円です。12億円の税金を払わなくて済むかどうかは、大きな問題なのです』
現在の税制では、減資を行っても、実際の経営実務におけるリスクはほとんどない」(同)
では、財務上のデメリットがないのなら、なぜ、すべての企業が中小企業化を狙わないのかという疑問があるが。経済ジャーナリストの磯山友幸はこう解説する。
「大企業が中小企業化し、あからさまに節税するのは、『公』に対する責任を放棄する行為とみなされる。企業の評価やブランド価値が毀損するリスクがあるのです」
税法によって定義された中小企業に対して税制上の優遇があるのは、国内企業の99.7%を占める、本来の意味での中小企業の経営を助けるためで、大企業のためではない。
現代は、こんな例があるという。
「15年5月、シャープはグループ全体の前期最終赤字が2223億円に膨らみ、苦境に喘いでいた。その際、状況打開すべく画策したのが減資だった。1218億円の資本金を1億円に減らし、中小企業化による節税を図ったのだ。
だが、社会はそれを許さなかった。『大規模な営業活動を行っている以上、多額の税金を支払うのは当然』『ルールの抜けた穴を突く形で、中小企業のための税制優遇を受けるのは卑怯だ』と批判が殺到した。
さらに、宮澤洋一経済産業相(当時)もこの減資に対し、『企業再生としては違和感がある』と指摘。結果、減資は5億円までに留まり、中小企業化は失敗に終わった。
以来、看板だけを挿げ替えて税制の優遇に縋る大企業の中小企業化は、『禁じ手』として忌避されてきた。
JTBは、コロナ禍を口実に、その忌避を破ってしまったのである」(同)
JTBが非難を受けないのは、コロナ禍もあるだろうが、菅首相や二階俊博幹事長の後ろ盾があるからではないのか。現代はさらに追及する。
「税金を支払うのは、巨大な事業規模を持つ企業として当然の責務だ。しかも、JTBはすでに昨年、GoToキャンペーンという『優遇』を受けている。旅行業界に1兆6794億円もの税金が投じられたこの施策で、業界トップのJTBも、その恩恵を少なからず享受したことは言うまでもない」(同)
株式会社セブン&ホールディングス代表取締役会長や日本経済団体連合会副会長を歴任した鈴木敏文も、今回の措置には疑問を呈している。
「節税のための減資は、国のルールに反してはいないかもしれない。しかし、実態が大企業であるにもかかわらず、税金を理由に看板だけを中小企業にするような『我田引水』の経営は、一般常識として許されることではないでしょう。『税逃れ』の誹りを受けたとしても、致し方ない」
現代によると、2020年から今年にかけて、1億円の減資を実施もしくは予定をしている大企業は8社あるそうだ。
最も古い歴史を持つ毎日新聞社もその一つである。創業から149年、従業員数は2000人を超える。19年度の売上高は880億6200万円(業界4位)だが、業績は苦しく、20年3月期の最終赤字は69億6800万円にもなっていた。
「1月15日の臨時株主総会で、毎日新聞社は41億5000万円の資本金を1億円に減資することを決定した。これも、税制上の優遇を受けることを狙ったものだ。
19年10月の消費増税の際、新聞社は『社会の公器』であるという主張を重ねて、軽減税率の対象となった。そうやって、公器を自称して優遇措置を得ながら、自社の経営という私的な事情であっさりと減資を行い、節税を図るという姿勢には、やはり違和感を覚えざるを得ない。
シャープが減資を画策した当時、毎日新聞は『節税目的の減資』だと批判を浴びせた。まさにブーメランだ。『貧すれば鈍する』の言葉どおり、今後、他企業や政治家による税逃れ行為が起きた時、『公器』毎日新聞は、彼らを批判することができるのだろうか」(同)
言行不一致はメディアの得意とするところである。他に厳しく、身内には優しくもメディアの特性である。減資という名の税逃れが、これからどんどん増えてくるだろう。麻生財務相は、こういうときこそ怒鳴らなければいけないはずである。
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