「遊べる」がコンセプトで大躍進中!──「軽はダサい」はもう古い考え? オトコたちが乗る軽自動車の事情
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「車嫌い教育」が軽自動車ブームを生んだ?
自動車評論家の国沢光宏氏も、現在の軽自動車の活況について「非常におもしろい車が増えている」と肯定的に評価しているひとり。
「近年は、購買力の高い30代~40代のちょっと裕福な層を狙ったラインナップが揃っており、軽自動車の魅力が輝いているのを感じます。これまで名前が挙がっている車のほかにも、ダイハツのタフトやスズキのスペーシアギアなど、遊べて楽しい車が多いんです」
しかしそんな軽自動車業界の活況を語る一方で、国沢氏は、「軽自動車=ダサい」というイメージは、まだ払拭されていないのではないか、と疑問の声をあげる。
「軽はダサくないと考えているのは、現在30代~40代となっている70年代~80年代生まれの世代だけではないかと思います。その上の年代や下の年代では、軽自動車に対するダサいというイメージは変わっていないのではないでしょうか?」
国沢氏は30代~40代が「軽自動車がダサくなくなった」と考えるようになった理由として「車嫌い教育」の影響を指摘する。
「現在の30代~40代が子どもの頃は、車は環境に悪く、交通事故を引き起こす存在として教育されてきました。彼らが教育を受けた80年代~90年代は、高度経済成長期に社会問題となっていた工場による環境汚染が一段落し、車の排気ガスによる環境汚染が厳しく指摘されていた時代。また、88年からはそれまで1万人を割り込んでいた交通事故死者数が1万人を越え『第二次交通戦争』と呼ばれました。それらの社会問題を学校で学んだ結果、『自動車は悪いもの』というイメージが刷り込まれていった。その結果、多くの人が車に対する興味を持たなくなってしまったんです。
一方、その下の世代における車の教育は、少し異なっています。97年にプリウスが登場し車の環境負荷が下がり、エアバックの普及などによって交通事故死者数が減っていくと、『車嫌い教育』は薄れていく。そのため、今の20代は、決して30~40代ほどには車が嫌いではなく、再び『軽はダサい』という声も耳にするようになっています。軽自動車の割合がこの数年、36%程度で高止まりをしているのもその証拠ではないでしょうか」
「男も軽」という価値観は、「車嫌い教育」を受けた30~40代に特有のものなのか? 広島大学大学院准教授(文化社会学)の西村大志氏はリアルな「移動」が中心となっていた20世紀型の社会から、情報環境に制御されたリアル/バーチャルな「移動」が中心を占めるようになった21世紀の社会構造の変化とともに、現在の30~40代が直面した経済状況が影響しているのではないかと話す。
「バブル崩壊の余波を受けて大卒求人倍率は91年の約2・9倍から急速に下落し、96年には約1・1倍となりました。94年には『就職氷河期』が流行語大賞にノミネートされました。そんな時代に就職したのが現在40代であり、彼らが社会に出たのは経済状況から車を買いにくかった時期だったんです。それ以降も、00年代前半まで就職氷河期は続きました。
コロナ禍前までは大卒求人倍率も上がり、売り手市場と呼ばれる時期もありました。初めて車を購入する20代を取り巻く雇用環境の違いも『軽自動車=ダサい』と考えるか否かの要因になっているのではないでしょうか」
教育や雇用などの複合的な要因が重なり、「失われた20年」に社会に出た人々は前世代ほど車に興味を示さず「軽自動車でいい」というムードが広がっていき、軽自動車市場が盛り上がる結果となった。そういえば、彼らが20~30代だった00年代は「若者の車離れ」が叫ばれ始めた時代。現在の軽自動車の地位向上は車離れの帰結なのかもしれない。
それを裏付けるように、前出・国沢氏は、軽自動車ユーザーの多くが自動車の性能に対して無関心であると指摘する。
「自動車事故対策機構による自動車アセスメント(JNCAP)の結果を見れば、自動ブレーキの性能などは、ホンダと比較するとスズキやダイハツは劣っている。しかし、軽自動車ユーザーの多くはそんな安全性能の詳細まで求めるのではなく、『自動ブレーキが付いてるからいいや』と思考停止し、楽しさを売りにする車を購入してしまいがち。軽自動車のCMにおいて『遊べる』『楽しい』といったイメージばかりが語られるのは、消費者の自動車に対する無関心の裏返しでしょう」
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