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「スニーカーはレディースサイズになるとダサくなる」は正しいのか? フットウェアデザイナーが語る「靴のジェンダー」の今

ジェンダー、人種、サステナビリティ…ファッション業界を席巻する旬なワードはあるものの…

「スニーカーはレディースサイズになるとダサくなる」は正しいのか? フットウェアデザイナーが語る「靴のジェンダー」の今の画像2
YOAK2021年春夏コレクション

──YOAKでは、メンズもレディースもデザインは変えていないんですよね。

広本 基本的にユニセックスで、全サイズ通しでやっています。なので、メンズサイズを女性がマニッシュに履きこなせたり、レディースサイズを男性がフェミニンに履きこなせたりと、自由に選んでいただけるようにしています。

──同じデザインでサイズを広く展開するのは珍しいことなのでしょうか?

広本 そうですね。僕が10年前くらいにメーカーにいたとき、メンズとレディースでデザインも分けず、23センチから29センチで展開したことがあったんですが、販売店さんや代理店さんに、かなり驚かれた記憶があるので、いまだにその感じは残っていると思います。

──ちなみに、そのときの試みはうまくいったんですか?

広本 うまくいきました。なので、自分でブランドを始めるときも、同じようにやりたいと思ったんです。やっぱり大きい会社になると、決められた縛りの中でやらなければいけないことも多いし、変えるのはなかなか大変だと思いますが、今回のツイッターを見ても、社会全体の流れが変わってきているので、自然にそうなっていくのかなと思います。

──とはいえ、設備投資がかかるという現実的な面を見ると、もう少し時間はかかりそうな気がします。

広本 まあ、設備投資というと夢のない話になっちゃいますよね。もちろん、ほかにもいろいろな要素があると思いますが、逆を言うと、女性をバカにしているとか、男女をはっきりと区分けして物事を考えているとかというよりは、単純に商売としての話で、いまのような状況になっているとは言えると思います。

──やはり、ファッション業界において「ジェンダーレス」というのは大きなテーマになっていると感じますか?

広本 言葉としてはすごく耳にするようになりました。ジェンダーの問題と、人種の問題、あとはサステナビリティですね。僕はYOAKのほかに、ビジュアル制作や、他社さんのブランディングも事業として行っているのですが、いろいろな会社とお話しする中で、そういった意識の高まりはすごく感じますし、気にしていく必要があると思っています。

──ナイキジャパンが差別問題に関する広告を打ち出したり、アディダスのスタンスミスがサステナブルにシフトしたり、いろいろな動きがありますよね。

広本 そうですね。企業はみんな意識してやってると思います。それこそ、モデルさんを使ってビジュアルとかを作るときも、黒人モデルを使って欲しいと言われることも増えました。ただ、個人的な考えですが、それを声高に言えば言うほど、商業的な匂いがしてくるというか、陳腐になってしまうようにも感じているので、理想としては自分たちがやりたい方向に進んでいって、それが後からついてくるような感じになればいいなと思うんです。もちろん、社会的な問題は意識していく必要があると思うし、そういう企業しか残っていかないとは思いますが、そのアプローチの方法については、難しいところもたくさんあるなと思います。

──そういった意味では、同じデザインでサイズを広く展開するというYOAKのやり方は理想的でもあるのかなと思いますが、そこには広本さんなりの理念があったのでしょうか?

広本 そういうものにしたいって考えはすごいありますね。でも、なんでそう思うのかはわからなくて。メーカー時代にもやったくらいだから、昔から自分の中に根付いてしまってるんだと思います。だって、23センチから29センチくらいまで自然にあったほうがよくないですか?

──いまYOAKのユーザーには、メンズとレディースどちらが多いんですか?

広本 もともとメンズから知っていただけたこともあって、6~7割がメンズです。でも、最近はレディースも増えてきましたね。

──とはいえ、単純に儲けを突き詰めれば売れ筋に絞ったほうがいいはいいんですよね?

広本 そうなっちゃいますね。ただ、僕としては、いろいろ試したかったというのがあるんです。YOAKは6年くらい前に立ち上げたんですが、それまで会社員としてブランドをやっていく中で感じていた、やりきれない思いをなんとかしたくて、それで思いついたのが、オンラインでブランドをやることでした。いまでこそ普通のことですが、当時は「そんなの絶対に売れないじゃん」「大丈夫?」って、9割反対されて1割引かれるっていう感じでしたね(笑)。でも、メーカーでやってきて、卸が入ってすごく遠回りをしてややこしくしているのが嫌で、お客さんに直接訴えかけたいというのが始まりだったので、サイズ展開に関しても、効率が悪くても自分で幅広く提案をしたいって部分もあったと思います。

──結果的に広本さんはいろいろな常識を覆してきたわけですが、まだまだ業界には変わらないといけないところは多いと感じますか?

広本 僕自身は、変えてやろうみたいな意識でやってきたわけではないので、そこは難しいですね。すべての仕事がそうですけど、自分が楽しくないことをやってしまうとヘンになっちゃうと思うんですよ。こう言うとちょっとかっこよくなっちゃいますけど、「自分たちがドキドキすること」を突き詰めていったほうが効率いいと思っていて。だから、変にブランドを大きくしようとか、もっと売り上げを上げようとかっていうのは正直あまりなくて、性別や人種とかひとつの考え方に縛られないで、楽しんでいる人に人はついてくるだろうし、それが全部につながっていくんじゃないかって考えでいままでやってきたので、これからもそれを続けていきたいなと思ってます。
(インタビュー・文/森野広明)

「スニーカーはレディースサイズになるとダサくなる」は正しいのか? フットウェアデザイナーが語る「靴のジェンダー」の今の画像3

広本敦(ひろもと・あつし)
1979年生まれ。グラフィックの専門学校卒業後、大手スポーツメーカー、商社でキャリアを積む。2016年に独立し、フットウェアブランド「YOAK」を立ち上げた。現在はオンラインストアのほか、ISETAN MEN’S をはじめとする国内外60店舗ほどの店にも並んでいる。

YOAK公式通販サイトhttps://store.yoaktokyo.com/

最終更新:2021/03/15 13:00
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