財務省が国民の税負担を発表… “お手盛りの大甘見込み”を垂れ流すマスコミの罪
#財務省
財務省が2月26日、2021年度の国民負担率の見通しを発表した。
その内容はいつもながらの“お手盛り”で、まったく実現性がないものとなっている。財務省はいつまで“空虚な数字”を発表して、国民を欺くのだろうか。
国民負担率とは、「租税負担率と社会保障負担率を合計」したもの。租税負担は国民の支払う国税と地方税の合計で、社会保障負担は年金や社会保険料などだ。その二つ合計が国民所得に占める割合を示すものだ。
今回発表になったのは19年度の実績、20年度の実績見込み、21年度の見通しで、19年度実績は44.4%、20年度実績見込みは46.1%、21年度見通しは44.3%となっている。そして、租税負担と社会保障負担に財政赤字を加えたのが「潜在的な国民負担率」となり、19年度実績は49.7%、20年度実績見込みは66.5%、21年見通しは56.5%となっている。
国民負担率は19年度実績、20年度実績見込みが連続で過去最高を更新しており、20年度まで5年連続の過去最高となっている。一方、潜在的国民負担率も新型コロナ対策での赤字国債の巨額発行により、20年度は大幅に上昇した。(表1参照)
国民負担率の信憑性を説明する前に、関連するマスコミ報道について、まずは述べておきたい。
例年のことなのだが、何故が報道では実績や実績見込みよりも、見通しを中心に報道する。この発表を扱った日本経済新聞の見出しは、21年度の国民負担率が44.3%に低下するということを強調したものだった。
マスコミは過去よりも将来を重視する傾向が強い。実績よりも実績見込み、実績見込みよりも見通しだ。だが、今回の国民負担率については、特に新型コロナウイルスの影響があっただけに、19年度の実績、20年度の実績見込みが重要だ。
そこで19年度の実績、20年度の実績見込みから検証してみよう。19年度は新型コロナの影響がほとんどなかったが、新型コロナの影響を受けた20年度の実績見込みは44.4%と1.7ポイントも急上昇している。
19年度から20年度では、租税負担が0.5ポイント、社会保障負担が1.3ポイント上昇している。負担率が上昇したのは、新型コロナの影響により経済活動が停滞したことで、GDP(国民総生産)が559.7兆円から536.1兆円に低下し、国民所得が401.3兆円から377.0兆円に減少したことで国民負担割合が上昇した。(表2)
この背景には、19年10月に消費税率が10%に引き上げられ、20年度は初めて通年度で消費税率引き上げの影響を受けたことや、社会保障負担が20%近くにまで上昇したことがある。加えて、新型コロナ対策のために巨額の赤字国債を発行したことで、財政赤字が5.3%から20.3%と15.0ポイントも上昇したことで、潜在的国民負担率は49.7%から66.5%と16.8ポイントも上昇している。
そこで、マスコミが重視している21年度見通しだが、国民負担率は20年度実績見込みから1.8%低下する。その要因はGDPが559.5兆円まで回復し、国民所得が393.6兆円まで回復することにある。
GDP559.5兆円は、新型コロナの影響がほとんどなかった19年度の559.7兆円と同水準であり、国民所得も19年度並みまで回復するという“夢物語”のような予測に基づいたものだ。
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