SHINeeとユンホが提示した“ベテランK-POPスター”の在り方 キャリアを分断する「兵役」の先にある景色
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──世界中を席巻するK-POPだが、男性スターに必ず訪れるのが“兵役”の宿命だ。音楽ライターの宮崎敬太が、中堅K-POPボーイズグループの活躍から兵役とキャリア問題について考察する。
私はInstagramのアカウント名をexo_keitaにするほどEXOが大好きなのだが、昨年のある日、SNSで何気なくEXOの誰かの写真を見た時、ほんの一瞬だけ「古いな」と感じてしまった。2012年のプロローグ曲「What Is Love」から大好きで、一応EXO-L(EXOファンの総称)の末席を汚させていただいているつもりだっただけに、自分自身にショックを受けた。
そこで改めてK-POPと韓国の兵役義務について考えた。まず自分を分析するに、当時はNCTに狂っていた。そしてEXOも実質不在だった。兵役のため、18年の「Love Shot」以来フルメンバーで活動してない。ご存知の方も多いと思うが、韓国の兵役法では、男性は満20~満28歳のどこかで、18~21カ月の間、軍隊に行かなくてはならない。EXOの場合、2019年にシウミンとD.O、2020年にスホとチェンが入隊した。2019年組はすでに除隊したが、今度は3月29日にチャンヨルが入隊する。また年齢的にベクヒョンも今年中に軍隊へ行くだろう。
EXOは9人組の大所帯だが、一人少ないだけでステージがやたらと広く感じる。素晴らしいのに、どこか物足りない。メンバーが揃ってないので、当然グループとしての活動は減る。その間、ソロで新しい魅力を発掘できる人もいるが、それも全員ではない。あまり情報が伝わってこないメンバーも出てくる。すると徐々にグループの存在感が薄くなる。
一方、K-POPシーンはお構いなく活発に動いていて、フレッシュで実力も高い新人や、個性的な中堅がひしめきあっている。BIGBANGの絶頂期、いつもEXOが音楽番組の一位を獲れないのが悔しかった。だけど王座は自然とEXOに移譲され、現在はBTSが座っている。もちろんこの結果はそれぞれが努力して勝ち取ったというのが大前提なのだが、遠因に前述した兵役義務の影響がある感は否めない。つまりK-POPシーンの激しすぎる新陳代謝と兵役は表裏一体なのだ。
メンバー全員が義務を終えて、ようやく活動を再開する頃、おそらくシーンは激変している。最悪の場合は自分たちの居場所がなくなってることもあるだろう。日本のアイドル・アーティストに比べて、K-POPシーンに30代の男性が極端に少ないのにはそんな背景があるように思える。
前置きが超絶長くなってしまったのだが、だからこそ今年1月の東方神起・ユンホのカムバックは嬉しかった。アイドルだって人間だから当たり前に歳をとる。ユンホはカムバ曲「Thank U」のMVで、ハードコアなバイオレンス映画『新しき世界』(13年)をオマージュしたような世界観を打ち出した。しかもアイドルにありがちなぬるい感じじゃなく、だ。これは、それまでアイドル的に受容されていた俳優・ウォンビンが映画『母なる証明』(09年)でミステリアスな知的障害者を演じることで、俳優として新たなステージを開拓した姿にも重なる。ユンホは成熟した男性だからこそ成立する、新しいK-POPの男性像を作り上げた。
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