トランプをまだ支持し、コロナワクチン陰謀論を信じる… キリスト教右派「福音派」とアメリカ大統領の危ない関係
#大統領 #陰謀論 #福音派
約85%がキリスト教徒の国、アメリカ。人口の約半数がプロテスタント、約4分の1がカトリックだ。2007年のハリス世論調査によれば、アメリカ人の60%が「生活における宗教の重要性」について「非常に重要」、95%が「神を信じるか」という問いに「イエス」、80%が「人生における宗教の重要性」について「重要」と答えており、これはヨーロッパ諸国より断然高い数字である。
アメリカでは宗教は人々の生活に密着しており、政治に対しても大きな影響力を持っている。支持政党で見ると、ユダヤ教徒は民主党、モルモン教徒は共和党、福音派は共和党、プロテスタント主流派は民主党寄り。カトリックは最大の浮動票だが、トランプ政権下では白人のカトリック(共和党支持)とヒスパニックのカトリック(民主党支持)に分断が起こった。
中でも注目すべき宗派は、プロテスタントの「福音派」だ。プロテスタント「主流派」は聖書解釈を絶対視することなく、ほかの宗教への寛容度が高いが、この40年で信者数を3分の2も減らした。一方で、「福音派」は聖書の記述を絶対視し、保守的で外部やほかの宗教には不寛容だが、信者数は同じ間に30%近くも増加し、今やアメリカの全人口の約30%以上を占める。
『アメリカを動かす宗教ナショナリズム』(ちくま新書)を上梓した松本佐保氏(名古屋市立大学人文社会学部教授)に、日本では語られることの少ない「宗教を通して見えるアメリカ」について訊いた。
アメリカ人の3人に1人が福音派
――福音派の規模感と、影響力の背景を教えてください。
松本 アメリカの人口は3億以上ですが、福音派はその約3分の1。つまり、1億近くいます。そして、白人の福音派はトランプ支持であり、バイデン政権になってもいまだトランプを支持し続けているようです。
アメリカの選挙を考える際、日本人はニューヨークやロサンゼルスの動向に目が行きがちです。でも大統領選では、いわば田舎、特にに選挙人の数が多いテキサス、フロリダといった南部の州でいかに票を取るかが鍵を握ります。そして、そういう地域で福音派は強い。週末の集会で数千~数万人を集める「メガチャーチ」のアメリカ最大の教会がテキサスにあり、そこにはトランプ支持者が集まっています
なお、BLM(Black Lives Matter)が盛り上がったのも、人種差別が強く残っている南部です。
こうした背景には何があるか。かつては南部は農業、北部は工業がさかんで、アメリカは北部中心に発展してきました。ところが、「土地が安い」という理由で武器産業、航空産業の拠点がどんどん南に移っていった。すると、仕事を求めて人も移ってくる。そういうわけで人口も南のほうが増えています。
アメリカの北部から南下してくる人だけでなく、メキシコから北上してきた移民も集まります。彼らが日曜にどこに行くか。福音派がメインのメガチャーチです。というのも、カトリックの教会の礼拝は型が決まっていて退屈な一方、メガチャーチの集会はエンタメ性があり、ロックバンドが出たりするので、家族みんなで歌って踊ったり遊んだりできる。つまり、宗教的な理由というより、コミュニティとして居心地が良い、あるいはエンタメ的に楽しいという理由で改宗する人が増えています。もともとヒスパニックの人たちは4分の3がカトリックなのですが、4人に1人が福音派に改宗しています。こうした福音派への改宗現象はアメリカ国内だけでなく、ブラジルやメキシコなどラテンアメリカでも起こっている現象です。
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