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新型コロナで陰謀論が急拡大!「バカが騙される」は間違っている…誰もが感染する陰謀論への対処法

おもしろい陰謀論と、つまらないファクトチェック

新型コロナで陰謀論が急拡大!「バカが騙される」は間違っている…誰もが感染する陰謀論への対処法の画像2
『正義を振りかざす「極端な人」の正体』(光文社新書)

──陰謀論が広まっていく背景には、他にも要因があるのでしょうか?

山口:陰謀論は「メディアの報じない真実」など、センセーショナルに煽ることによって拡大していく。以前、サイエンスに掲載された研究では、真実の情報よりもフェイクニュースの方がはるかに拡散しやすいというデータも出されました。

また、東京大学の鳥海不二夫先生の研究では、SNSでは「怒り」の感情が最も拡散しやすいという結果が明らかになっています。陰謀論は、読者をセンセーショナルに煽り「メディアが伝えない真実」を売り文句にすることで、人々の正義感を刺激し、不正に対する怒りを焚き付ける。それによって、情報が拡散していくんです。

──陰謀論やフェイクニュース、デマの拡大を防ぐために、さまざまなメディアがファクトチェックを行っています。しかし「8割の人が騙されてしまう」「怒りの感情によって拡散していく」とすれば、ファクトチェックの効果も限定的なのでしょうか?

山口:そうですね。ファクトチェックの普及活動を行う「ファクトチェック・イニシアティブ」の事務局長・楊井人文先生も、「ファクトチェックは万能ではない」と話しています。センセーショナルに煽る陰謀論が刺激的でおもしろい一方、ファクトチェックは真実を追求するために地に足がついた煽らない情報を提供する。そのため、刺激がなく、情報として拡散しにくいんです。

──陰謀論はセンセーショナルな怒りの感情に乗って拡散し、ファクトチェックは地に足がついているから情報として拡散しにくい……。

山口:ただ、演出方法によってはおもしろくなることもあります。韓国のテレビ番組「JTBC Newsroom」では、ファクトチェックコーナーを放送しており、視聴率も高いんです。刺激が薄いファクトチェックも、伝え方次第で人気コンテンツとなり得る一例です。

──正しい情報をただ伝えるだけでなく、メディアの側にも工夫が求められるんですね。

山口:しかし、もしファクトが行き届いたとしても「バックファイア効果」に直面してしまうことには注意が必要です。これは、陰謀論を信じている人に対して「その情報は間違っている」と指摘しても、「真実をわかっていない」と、より強固に陰謀論を信じてしまう心理的な現象のこと。ファクトが届いても、それに対する反発が逆効果を生むこともあるんです。

ただし、世の中には、強固に陰謀論を信じている人だけではありません。8割の人が騙されるといっても、その多くは頑なに信じ込むのではなく「本当かな……?」とゆるやかに信じる程度。そのような「ゆるい陰謀論信者」に対してはファクトチェックも効果があると思います。

民主主義を壊す陰謀論

──この先、陰謀論が拡大していくことによって、どんな弊害が考えられるでしょうか?

山口:研究では、フェイクニュースを信じることによって意見を変えるのは、別の意見を弱く支持していた人でした。政党や政治家の支持者の多くも、弱い支持をする人々ですよね。もしも、政党、政治家、諸外国などが、戦略的に陰謀論やフェイクニュースを扱えば、民主主義を損なうことにも繋がりかねません。

──では、今後、陰謀論とはどのように付き合っていくべきでしょうか?

山口:そもそも、陰謀論は昔からあったものです。コロナ禍という社会不安や、SNSが発達したメディア環境によって強まっていますが、それが根絶されることはないでしょう。我々が考えるべきは、陰謀論を根絶するのではなく、社会的な影響を弱めていくことです。

陰謀論に対処するための最も効果的な方法は、誰もが騙されることを前提にしながら、情報を受信する個々人が陰謀論に対する免疫をつけること。「拡散する前に一呼吸置いてみる」「情報を鵜呑みにしない」「感情に振り回されて情報を拡散しない」それらを注意するだけで、陰謀論は圧倒的に抑制されます。

情報が溢れると、人間はその摂取ばかりに一生懸命になり、自分で考えることを忘れてしまいますよね。洪水のように情報を浴びる環境だからこそ、その摂取ばかりでなく、一呼吸置いて考えることが、かつてよりも重要になってきているんです。

(プロフィール)
山口真一(やまぐち・しんいち)
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授。博士(経済学)。1986年生まれ。博士(経済学・慶應義塾大学)。専門は計量経済学。研究分野は、ネットメディア論、情報経済論、情報社会のビジネス等。「あさイチ」「クローズアップ現代+」(NHK)や「日本経済新聞」をはじめとして、メディアにも多数出演・掲載。主な著作に『正義を振りかざす「極端な人」の正体』(光文社)、『なぜ、それは儲かるのか』(草思社)など。

萩原雄太(演出家・劇作家・ライター)

演出家・劇作家・フリーライター。演劇カンパニー「かもめマシーン」主宰。舞台芸術を中心に、アート、カルチャー系の記事を執筆。

Twitter:@hgwryt

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はぎわらゆうた

最終更新:2021/03/10 20:00
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