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日刊サイゾー トップ > 社会  > 電通に政府の仕事を丸投げできなくなったら…

電通に政府の仕事を丸投げできなくなったら、どこが引き受けるの? 「悪の政商」呼ばわりへの反論を聞く

電通が「世論操作」をする理由はない

――話は変わりますが、最近、電通をはじめとする広告会社から「SDGs(持続可能な開発目標)」に関する多くの予算が流れ、テレビやネットメディアで取り上げることが増えました。こういう事象があると「電通は世論を操作している」という陰謀論になるわけですが、実際はどうなんでしょうか。

A氏 「SDGs」というテーマは2015年に国連サミットで採択され、2017年に世界経済フォーラムの年次総会である「ダボス会議」でも大きく取り上げられたことで、さまざまな場面で使われるようになりました。国連といっても利権の話は事欠かないし、欧州投資家の思惑があるといった話もありますが……。

 それはともかく、中央省庁や地方自治体ではSDGsをフックとして新しい事業を立ち上げて予算を確保していますし、民間企業でもコモディティ化した製品を差別化するマーケティングのワードとしてSDGsを使っています。

 いずれの場合も広報や広告がつきものですから、電通にはSDGs絡みの大きな事業予算が流れています。電通の営業からも、クライアントやメディアに対して「SDGsで何かやりませんか」という提案をしているでしょう。

――ということは、やっぱり電通は「悪の政商」なのでしょうか。

A氏 いや、電通は「SDGs」のようなテーマやアジェンダの形成に関わってその方向に世論を操ろうとするようなことはしない、ということです。どこかで作ったアジェンダを商売のネタにすることはあっても、自らが立案することはない。電通自体が政策提言をしているわけではないのですから、世論操作をする理由もない。

 頼まれた仕事を断らず、手段を尽くして何が何でもやり遂げる。それが電通です。そういう存在が政府や大企業には助かるのは当然ですが、「利権」でも「政商」でもない。もちろん監視は必要ですが、過度に「悪役」のイメージをもつだけではなく、うまく利用するというか仕事を託していく道もあるかと思います。

<インタビューを終えて>
 まず頭に浮かんだのは「新聞の罪」だ。この程度の情報は大手紙の記者なら入手しているに違いない。

 しかし、悪をなす政府や大企業を批判するのがジャーナリズムの役目という硬直的な自己規定からは、「緊急時の行政サービスを透明かつ円滑に行うためにはどうすればよいか」といった建設的な課題提起はされにくい。今回の問題もスキャンダルとして消費して終わるだろうが、むやみにプレッシャーをかけることで、物事を水面下で進めるよう追い込んでいる面もあるように思える。

 一方「電通自体が政策提言をしているわけではないから、世論操作をする理由もない」というA氏の言葉にも引っかかった。元ナチスドイツのアイヒマンの裁判を傍聴したハンナ・アーレントは「悪とは、システムを無批判に受け入れること」と書き残した。電通が巨悪とは言い過ぎかもしれないが、クライアントの方ばかりを向いて「いかにうまくやるか」だけに巨大なパワーを注ぎ込む姿勢には危うさもある、というのは意地悪すぎる見方だろうか。

<このテーマに関する内部情報などがあれば編集部にお寄せください>
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鴨川ひばり(ライター、編集者)

1967年生まれ。出版社、ネットメディアなどで編集者を歴任。現在はフリーランスで活動中。

Twitter:@hujiie

かもがわひばり

最終更新:2021/03/09 18:00
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