低迷する出版界に嵐を呼ぶトリックスター登場!大泉洋主演、吉田大八監督の快作『騙し絵の牙』
#映画 #大泉洋 #出版業界 #佐藤浩市
社会の底辺に注ぐ、吉田監督のまなざし
映画監督が他の監督の作品に、俳優として出演するケースが増えつつある。土井裕泰監督の恋愛映画『花束みたいな恋をした』(公開中)では、アニメ界の巨匠・押井守監督が主人公たち(菅田将暉、有村架純)の恋のキューピッドを演じている。今泉力哉監督、松坂桃李主演の青春映画『あの頃。』(公開中)では、ピンク映画界で活躍するいまおかしんじ監督が意外なシーンに意外な役で登場する。本作でキーパーソンを務めるのは、『シン・ゴジラ』(16)では生物学者を演じるなど俳優としても十分なキャリアを持つ塚本晋也監督だ。
自主映画『鉄男』(89)でブレイクして以降、独自のスタンスで映画を撮り続ける塚本監督が、本作で演じているのは小金井で小さな本屋を営む、高野の父親役。お客を喜ばせるために身銭を切る、泣かせる本屋のオヤジだ。お店のもうけよりも、お客の喜ぶ顔を見ることを楽しみにしている。こんな大人たちがこの国の出版文化をこれまで支えてきた。
出版不況に陥って、いちばん苦しいのは町の小さな本屋たちだ。ネットでの宅配注文が増え、電子書籍化が進み、底辺から出版文化を長年支えてきた町の本屋は風前の灯となっている。吉田監督は大手出版社で働くインテリ編集者たちよりも、むしろ高野の父親のような業界の底辺の存在に温かい目線を注ぐ。出版業界内の仁義なき戦いを描いた『騙し絵の牙』だが、草の根への想いがある。騙されても気持ちよいのは、社会の底辺へのまなざしを忘れてはいないからだろう。
『騙し絵の牙』
監督/吉田大八 脚本/楠野一郎、吉田大八
出演/大泉洋、松岡茉優、宮沢氷魚、池田エライザ、斎藤工、中村倫也、佐野史郎、リリー・フランキー、塚本晋也、國村隼、木村佳乃、小林聡美、佐藤浩市
配給/松竹 3月26日(金)より全国公開
(c)2020「騙し絵の牙」製作委員会
https://movies.shochiku.co.jp/damashienokiba/
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