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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 星野源の「一番ヤバいこと」

星野源の「一番ヤバいこと」をテレビで目撃する

星野源「変なことを、誰にも見られない場所でやるって、普通じゃないですか」

「闇が見える人だわ」

 27日の『マツコ会議』(日本テレビ系)で、マツコ・デラックスはそう評した。この日のゲストは星野源。おそらく初対面だという2人は、大げさに言えば”表現論”のようなものを語り合っていた。

 星野は子どものころを振り返る。

「自分がちっちゃい頃から、みんなが『こうだ』って思うことに対して、『俺こうなんだけどな』って思うことがすごく多くて」

 小学生のころには、コミュニティからどうしてもあぶれてしまう感覚があったという。頑張って仲間に入ろうとしても、入れない感じ。

「下校の帰り道で通学路を帰ってる4人とかをみると、だいたい1人後ろに歩いてるやつがいて。その子をみると、俺だなって思うんですよ。いつもそうだったんですよね」

 そんな彼が自分で音楽を作り始めたのは中学生のころ。周囲に曲を聴かせると、作曲を頼まれるようになった。それまで輪に入ろうと努力しても入れなかった自分が、曲を挟むことによって、他人とつながれるようになった。

「自分と他人の間にすごい深い川が流れてるなと思ってたんですけど、自分が何か表現をすることによって橋ができるっていうか」

 創作による架橋。そういったことを繰り返し経験してきた彼は、閉じられた場所で一部の人だけが喜ぶものではなく、開かれた場所で多くの人に伝わる表現を模索するようになった。

「変なことを、誰にも見られない場所でやるって、普通じゃないですか。でも、普通じゃないことを、誰にでも見られる場所で、堂々と普通のようにやるっていうのが一番ヤバいことで。それが一番面白いですよね」

 星野の語りに、おそらく彼と相通じるところがあるのだろうマツコが応じる。

「心の中にはものすごいヤバい狂気とか変態性があって。その部分があって、それをうまく正常とミックスできて出してる人が、すごい人になっていくんだと思うのよ。ホントにただ正常な人は、『正常ですね』って言われる人なのよ。より変態性が強かったり、より狂気性が強かったりする人が、ちゃんと社会とのコミュニケーションもとれてやってるから面白いのよ」

 昨年の大晦日、星野は『紅白歌合戦』(NHK総合)で、『うちで踊ろう』の2番をこう歌っていた。

「生きて踊ろう 僕らずっと独りだと 諦め進もう」

「ひとり歌おう 悲しみの向こう 全ての歌で 手をつなごう」

 どこまでも「独り」であることへの諦めと、「歌」を通じて「手をつなぐ」ことへの願い、いや、賭けのようなもの。橋を架ける。創作で架ける。創作に賭ける。誰にでも見られる場所に自身の変態性を晒し、「独り」の自分から「独り」の他人へと手を伸ばす。つかの間の公共性をつかもうとする。

 なるほど、星野源の面白さとヤバさが改めてわかったような気がした。あるいは、多くの人の目に晒される場所としてのテレビの面白さを再確認したような気がした。

 消毒した洗濯バサミにアジフライを吊るしているようなテレビを、これからも見ていこうと思う。

飲用てれび(テレビウォッチャー)

関西在住のテレビウォッチャー。

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いんようてれび

最終更新:2021/09/21 11:25
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