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森喜朗と橋本聖子のズブズブな関係──東京五輪開幕までにまた一波乱?

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橋本聖子

「首をすげかえただけで結局、アノ人じゃあ何にも変わらないと思うよ」

 こう苦笑するのは、ある自民党関係者だ。

 話題にあがったのは、先日、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の新会長に就任した橋本聖子参院議員(56)のことである。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて延期となっていた東京五輪の開催まで残り150日あまりに迫るなか、前任の森喜朗元首相から急遽バトンタッチしたのは18日のこと。交代劇の発端となった、森氏の「女性蔑視」と批判を浴びた舌禍騒動は衆目を集めた。

 ただ、この人事に関して前出の自民党関係者はこう明かす。

「女性であり、なおかつスピードスケートや自転車競技の選手として夏冬計7回の五輪出場を誇る『五輪の申し子』である橋本氏の組織委会長就任に世間はおおむね歓迎ムード。立ち消えになった川淵三郎元JFA会長への引き継ぎ案で出た『密室人事』との批判もかわせた。ただ、橋本氏に会長職を譲ったことで、森氏にとってはより『院政』が敷きやすい状況ができたともいえる」

「昵懇の仲」とされる川淵氏よりも「森&聖子」の結びつきは強いというのだ。橋本氏の政界進出時から続く森氏との因縁が背景にあるという。

「北海道出身の橋本氏の亡父は、道内でも指折りの牧場主として知られていた。バブル期には競走馬を生産する事業を急拡大させ、『地上げの帝王』として鳴らした最上恒産の早坂太吉ら多くのバブル紳士と交友を広げた。しかし、バブル崩壊のあおりを受けて事業は破綻。億単位の借金を残したばかりか、債務整理をめぐって暴力団関係者との関係が取りざたされるなど毀誉褒貶のある人物だった。橋本氏が参院議員に初出馬した時も、この父親の存在がネックになった」(前出の党関係者)

 橋本氏は父親が遺した借金を一部肩代わりしたともいわれているが、こうした障壁を取り除き、政界進出の後押しをしたのが森元首相だったといわれている。

「森氏は橋本氏の父親の莫大な負債の一部を整理するのにも一役買ったというの話だ。森氏の猛烈なプッシュの甲斐あり橋本氏は1995年の参院選で初当選を果たし、『政界の父』である森氏の出身派閥である清和政策研究会(現・細田派)から議員のキャリアをスタートさせた」(同)

 橋本氏は2019年に五輪担当大臣として初入閣を果たしたが、この人事にも森氏という後ろ盾の存在が強力に作用した。

 大臣就任時の会見には、2人が揃って登場。この場で森氏は「私の死んだ息子と同い年。私にとっては娘みたいな存在」「そう思っておおいに厳しくやろうと思ってます」と公言している。この場で森氏が言及した「息子」とは、2011年に急死した長男の祐喜氏のことである。

「地元・石川で県議を務めていたが、死の前年の2010年に小松市内で飲酒事故を起こす不祥事を起こして県議辞任に追い込まれていた。09年には、一緒に合成麻薬MDMAを摂取したホステス女性を死なせたとして俳優の押尾学が保護責任者遺棄致死の容疑で逮捕された事件でも、関係者として名前が浮上するなど、度々メディアにその名が取りざたされる『問題児』として知られていた。不肖の息子ほどかわいいというが、不幸な死を遂げた我が子と重ね合わせるほど橋本氏をかわいがっているということだろう」(前出の関係者)

 事ほど左様に「ズブズブ」な関係である森氏と橋本氏。騒動は一段落したものの、橋本氏の背後に蜃気楼のように漂う森氏の影が見えるようでは、開幕までにもうひと波乱、ふた波乱がありそうな気配だ。

伊芸有象(ルポライター)

1980年生まれ。在京新聞社や週刊誌を十数年渡り歩き、フリーのルポライターとして活動。犯罪や貧困問題などを精力的に取材している。

いげいゆうぞう

最終更新:2021/03/03 14:13
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