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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 青木真也が独自論を激白!

格闘家・青木真也が語るオリンピックと森喜朗騒動──「すべてが、もう前のようには戻らない」

「世の中がみんなイライラしている」青木真也が怖いと感じる瞬間とは

格闘家・青木真也が語るオリンピックと森喜朗騒動──「すべてが、もう前のようには戻らない」の画像3

──エンタメ業界は苦境ですが、ファンは青木さんの試合を見て、頑張ろうって勇気づけられていると思います。

青木 それはいいと思うんだけど。それって受け取り手の結果の話で、俺たちが「頑張ろう」って言うと、嫌になっちゃうでしょ?

──(笑)。

青木 いやいや、でもこれはすごい重要な問題ですよ。メッセージとして、結果としてそうなることと、「頑張れよ」って言うことは、話が全然違うから。

──そういうバランス感覚はどうやって身に着けたんですか?

青木 ずーと見ていますよ、世の中のことを。

──見ているとは?

青木 こういうことで燃えるんだって。森喜朗さんが叩かれてああなった時(注:五輪組織委会長だった森喜朗氏の女性軽視ともとれる発言が世間から批判を浴び、会長職を辞任することになった)も、「あっ、みんなイライラしている」って。もちろん発言に問題はありました。でも、世間のあの反応は「こんだけイライラしていて、権力者に対するイラつきがあったんだ」みたいなことを感じさせられた。そういうことをちょっと引いて見ていますね。

──俯瞰で世の中を見る視点って、どのように培ったのでしょうか。

青木 やっぱりどうやって試合を通じて物語を作るかってずっと考えているから。それだって、常に同じことやっていたら、腕がなくなっちゃうから(笑)。ずっとどうやって物語を作っていくのかなって考えないと、格闘家として飽きられてしまう。それは、危ないなって思いましたよ。

──青木さんは、そのバランス感覚が絶妙だと思います。

青木 だから、今は「みんな頑張ろう」みたいなメッセージを発信するタイミングじゃねえなっていうのはすごく思いましたよ。今は特に、何か不条理なこととか、理屈が合わないことがあって、人々の感情に火がついた時が一番怖いなって思いますよ。

──青木さんが怖いっていうのは、不思議な感じがしますね

青木 (即答)なんで?

──世間的には怖いものがなさそうなイメージですよね。

青木 そんなことないでしょ。社会が思考停止しているかな。なんていうか、ネット上は特に一斉に叩いていいフラグが立った時に、みんなで叩きにいくじゃん。それが今、あぶねえなって思って。だって(森喜朗氏は)辞めるって言って、もう去るのに、叩かれるんだもん。それって凄い怖いし、そういうのがあると、日本の強いリーダーってものが、出てこねえよなって僕は思いましたね。

──それはどうしてだと思いますか?

青木 だって損なんだもん。リーダーになったら(笑)。すごい強いリーダーが必要で、でも当然デメリットもあって、リーダーになったらなったで怒られて。これは大変な戦いだなって思いつつも、ああいう層がだんだん崩されているんでしょうね。

──なるほど、わかる気がします。

青木 特に男社会じゃないですか、僕たちの業界って。男社会だから、ああいうのって特に感じるものがありますけどね。でも本当に世の中変わってきてるし、僕「女子格闘技」って言わないようにしている。

──女子格闘技と言わないとは、どういう意味ですか?

青木 今、「女子」っていう言い方は、世間的にも良い印象を与えないと思うんです。これって危ないって思って。今、「女子格闘技」とは言わないようにしています。格闘技の女子の試合って言うようにしています。女子プロも僕的にはダメだって思っています。

──もう少し具体的に教えてください。

青木 当然格闘技っていうのは強さを競う競技ですからね。魅力あるぶつかり合いを見せる競技だから、“男性の試合”と“女性の試合”、どちらを見るかというと“男性の試合”なんですよ。それは仕方ないんです。

──はい。

青木 だってパワーの問題なんだもん。より強いものがみんな見たいでしょう。でも僕が最近思うのは、 “女性”っていう理由でメイン試合に組み込むのは違うよねって言う。あくまで、人を惹きつけるというか、性別関係なく良いもの作るのならいいけど、“女性”っていう理由でメインに入れるのはちょっと違うよねと。そういう意味でも、女子男子で分けないで、そこはドライに実力主義でいかないと。あんまり「女子だから」なんて言い方やスタンスでいると、いつ火をつけられるかわからないなって。

──なるほど。でも難しい問題ですよね、そこは。

青木 いや怖いっすよね。女子プロとか本当、危ないと思う。多分、いつか女子プロレスも、男子の格闘技も、異議申し立てが出るんじゃないかな。いつか誰かが、標的になって、何かのタイミングで叩かれ始める。これはもう仕方がない。誰かが(標的として)いかれる。

──最後に、2021年の展望とかありますか?。

青木 別に変わらずに。無理に何かやらなくていいキャリアなんですよ。もういい歳だし、いつ辞めても褒めて貰えるというか。ただ、今だにやっぱり格闘技が好きで、まだ見たいって言ってくれる人がいて、それは本当に幸せなことだと思います。だからこそ日々変わらずに、自分の思うことを、好きなことをコツコツやりたいなって思っています。

◇◇◇

 あくまでドライに、世の中を見据えた発言を放つ青木真也。その言葉や態度が人々の心をつかむのは、ストイックに格闘家としてあり続ける努力を続けているからではないだろうか。格闘家としてのキャリアは申し分ないはずだが、いまだ「ゴールデンエイジ」は更新中だ。

青木真也(あおき・しんや)
格闘家・レスラー。1983年生まれ、静岡県出身。早稲田大学在学中に、プロ格闘家としてデビュー。プロ格闘家として、PRIDE、DREAMに参戦。修斗世界ミドル級王座、DREAMライト級王座を獲得した。現在は、シンガポールに拠点を置く格闘技団体『ONE Championship』に参戦。2度の世界ライト級王座を戴冠している。

池守りぜね(ライター)

出版社やweb媒体の編集を経て、フリーライターに。趣味はプロレス観戦。 ライブハウスに通い続けて四半世紀以上。家族で音楽フェスに行くのが幸せ。

Twitter:@rizeneration

いけもりりぜね

最終更新:2021/03/07 13:00
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