格闘家・青木真也が語るオリンピックと森喜朗騒動──「すべてが、もう前のようには戻らない」
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コアな、本当の格闘技っぽいものを作りたい
──そういった中で、青木さんは自身のnoteで『RIZIN』の見どころについて書かれていますよね。
青木 僕、好きで書いていますね。格闘技選手から見ると、格闘技のマスコミってちょっと弱いなって思うんですよね。僕たち、練習するって最高の取材だから、力量がよりわかっちゃうんですよ。この選手はこういう動きするだろうなとか、これが強いなとか。試合見る前に「この選手とこの選手がやったらこういう展開になるな」っていうのが見えちゃうんですね。同じ選手だから。
──マスコミも選手視点では物を見られないですからね。
青木 格闘技のマスコミだと、そこまで書けないっていうのもあるし、わからないっていうのもある。ちょっと専門性が強いから。練習って作業は、自分自身のトレーニングでもあるけど、これ普通に考えると取材にもなっているなと思って。選手の癖から何から全部わかるから。だから、僕はそういうのを書くようにしています。
──『RIZIN』に注目している理由はあるのですか?
青木 別に特別『RIZIN』を注目しているってことはないんですけど、国内のメジャーというか、あれがあることで対比になるから。すごくわかりやすいものがあるからこそ、僕が映えるっていうのがあるんですよね。一番良くないのは、“市場の独占”なんですよ。必ず、黒があるから白が映える、白があるから黒が映える。だから一番良くないのは、独占だと思っているんです。
──『RIZEN』があるからこそ、それ以外の大会にも魅力が増すということですね。
青木 必ず反対側で起こっていることは強くあってほしいし、反対側で起こっている色は違う色で強く輝いてほしいっていうのはあります。昨年末の『RIZIN.26』(フジテレビ)の大みそかの試合が、あまりにもポップな作りをしているなって思ったんです。まあ地上波放送だったからそうなのだけれど。だから1月に僕がした試合は、あえてコアな試合にしました。『RIZIN』がああだから、こっちは本当の格闘技っぽい露骨なものを作ったほうが、映えるなって思ったんです。格闘技は観客があってのものだし、それは考えますよね。客が何を求めているのかっていうのは。
──ファンの書き込みはご覧になられていますか?
青木 見るけど、客の質が下がりましたよね、いや真面目に! 客の質が下がった。だから、一番良くないのは、多くのものが無料で楽しめることになってしまった弊害が凄いある。
──もう少し詳しく聞きたいです。
青木 いいものは、ネット上に無料で落ちていないんですよ。僕自身も、あまり無料のものばかり見ないよう気をつけているんですけど。結果的に無料のものが多すぎちゃって、全部読んでいると読み切れないよっていう話と、ある程度価値のあるものは、ある程度お金がかかるというか、手間がかかっているっていうのは思ってて。潮目が変わる雰囲気が、昨年末くらいから、ちょっと感じているんですよね。
──例えば、どういう時に感じていますか?
青木 格闘技界隈のネット記事を作るとして、どうしてもPV数のことを考えると、女子の試合を強く打ち出すとか、ラウンドガールの写真を目立たせるとか、そういうことをやればPVは上がると思うんです。でも、実際僕たちが読みたくて、勉強になる記事ってあるかっていうと、今はもう見当たらないんですよ。結局、有益な情報って(無料では)落ちていないよなって思っちゃいます。
──確かにそういった一面はありますね。
青木 仕事で格闘技をやっていると、情報が勝敗を分けるような要素がいっぱいあるんで。いまだに僕、37~38歳になってやれているのは、毎週末、世界各国で起こっている試合、見ているから。ロシアも、ブラジルも、ヨーロッパも、放送に乗っている試合はとりあえず見ている。総合格闘技だけじゃなくて、キックボクシングも、ほかのスポーツも、それなりにどういうことが起こっているかっていうことを、一応、チェックはしている。
──現在の他国での格闘技事情はどうなっていますか?
青木 今は試合数が多いです。特に放送局と組んでいる場合は、放映権が下りてくるから、試合はさせないといけないじゃないですか。実は、そんなに試合数自体は、メジャーな団体は変わっていない。日本の格闘技は、外国人が入れないってことを考えると、箱庭にはできるじゃないですか。ようはAKB48的とでもいうか。日本選手だけでリーグ戦になると、物語は作りやすい。ここで喧嘩した人が、ここで喧嘩していくみたいな物語を作れば盛り上がる。逆に国内は強いんじゃないかなって、今、思います。
──では今後のエンタメ業界自体は、どのようになるとお考えですか。
青木 すべてのエンタメが、もう前のようには戻らないでしょう。みんなウェブの配信で見るのが楽だってもう気づいているし、新しい生活様式っていう名のスリム化が進んじゃってるし、今まで通りに戻ると思っては、僕らも作っていないです。
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