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『ラップスタア誕生』唯一の女性ファイナリストが吐露した壮絶な人生とラッパーとしてのアイデンティティ

ラップを始めたのはわずか2年ほど前…一気にスターダムへ

 最初に麻凛亜女がバズったのは、彼女が前述の『ラップスタア誕生』のオーディション用に送った映像がツイッター上で公開されたタイミングだった。山積みにされたCD、そして積み重なる洗濯物の山と、無造作に置かれた幼児用の椅子。「訳あり物件みたいなオンナ」「前の旦那に殴られ折れた歯はそのまま」「ベッド以外で縛んな」と速めのフロウでハードなパンチラインを繰り出す。溢れ出す生活感と彼女が歩んできた壮絶な過去が滲み出、あまりに多くのことを物語る映像だった。

 同番組のファイナリストに残るほどの実力を示しながらも、麻凛亜女がラップを始めたのはわずか2年ほど前のこと。そのきっかけを「自分の気持ちをアウトプットする方法として、ラップがあった」と語る。

 「(番組では)ラッパーというよりもシングルマザーというイメージが先行しちゃって。真面目に話しているシーンもあったのに、ふざけている部分だけが切り取られて放送されることもあった。そうやってイメージを植え付けられれるのがすごく嫌で、窮屈だなと思う瞬間もありました。でも、途中でやめるのはダサいし、とにかく息子にかっこいいと思ってもらえるためにやりきろう、という気持ちで臨みました」と、その時の心境を打ち明けてくれた。そんな彼女が決勝ステージで披露した楽曲は、息子をテーマにしたものだった。

麻凛亜女 本番の2日前にやっと書けたんです。ずっとリリックが浮かんでこなくてどうしようと思っていたんですけど、朝5時くらいに息子の寝顔を見ていたら、”この子のことを書けばいいか”って。

 歌詞の中には、母親らしい言葉がいくつも並ぶ。その中で、自身も1歳になる息子を持つ筆者の胸にも深く響いたのが〈36度8分〉という何気ないフレーズだ。

麻凛亜女 毎朝、保育園や幼稚園で絶対に子どもの体温を測るじゃないですか。お母さんだったら共感してくれるんじゃないかなって思ったんです。あえて、そういうことを書きたかったんですよね。

 生活に密着した子どもとの触れ合いを感じさせるフレーズだった。周りがなんと言おうと、麻凛亜女は満たされた母親だ。

麻凛亜女 別れた夫がもともとビートメイカーもやっていた。養育費を払ってくれているわけでもないので、だったら、タダでレコーディングできる環境をよこせと言って、彼の力を借りながらレコーディングできるようにしたんです。前の夫とこんなふうに協力することに対して、理解できないと言われることもある。でも、こうやって2人で協力しながらラップで稼げるんだったら、これが息子に対する2人からの償いになるんじゃね?って思うんですよ。

 今の麻凛亜女には、リリース作品もライブ経験も、数えるほどしかない。逆に言えば、これからの活動には伸びしろしかないということだ。

麻凛亜女 ラッパーとして、もっと場数を踏みたいですね。今年中に、EPとアルバムを出します。あとは絶対バズりに行くんで、その準備をしようと思っています。今はまだ35%くらいの達成率だから、半分にも達していないので。

『ラップスタア誕生』唯一の女性ファイナリストが吐露した壮絶な人生とラッパーとしてのアイデンティティの画像3

[プロフィール]
麻凛亜女(まりあな)
1994年、フィリピン生まれ茅ヶ崎育ち。幼い頃からブラックミュージックを聴き始め、カリフォルニアへ移住。帰国後は横浜でクラブDJとして活動し、結婚と出産、離婚を経験。以後、ラッパーとしての活動もスタートさせ、2020年に開催された『ラップスタア誕生』シーズン4にてファイナリストまで勝ち残る。
Twitter〈@ganja_alice420〉
Instagram〈budgirl_mariana420

 

最終更新:2021/03/01 19:00
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