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「女性活躍」は経済政策で男女平等に興味なし──夫婦別姓に女性議員まで反対! 自民党に根付く男尊女卑思想

意識改革は行うも制度改革はせず

 このように自民党が取り組んできた政策は、結果として男性優位の社会を維持するものが目立つ。女性活躍推進政策が実態としては単なる経済政策で、一部ではむしろ女性の貧困問題を深刻化させるものだったことからもわかるように、議員の大多数はジェンダー平等の問題には無関心なのが実情だろう。だが最近は、その状況にも小さな変化が見えはじめている。

「例えば稲田朋美さん(衆議院)は保守派として知られた政治家ですが、近年は未婚ひとり親世帯への支援についても積極的な発言をしていますし、夫婦別姓についても独自の制度の新設を提案するなど、一定の理解を示していますよね。その行動については『彼女が首相の立場を目指しているからではないか』という分析もメディアで出ています。夫婦別姓制度への態度の変化は保守層から非難を浴びているようですが、稲田さんは選挙に強い政治家なので、特定の支持団体の意向をそれほど気にせずに意見を述べられる余地があるのでしょう」(堀江氏)

 また20年3月8日の「国際女性デー」には、橋本聖子女性活躍担当大臣がメッセージを発表。新たな男女共同参画基本計画については「ジェンダー平等と女性のエンパワーメントの取り組みを強化する基本計画にしたい」と表明した。

「橋本さんは日本会議国会議員懇談会のメンバーではありますが、彼女のコアな支持層が道徳的保守勢力だけではないということもあるのかもしれませんし、『SDGs』の17の目標のひとつに『ジェンダー平等』が入っているので、その言葉を使いやすくなった面もあるのでしょう。またバックラッシュの時期に『ジェンダーフリー』という言葉を行政が使わなくなり、『ジェンダー』という言葉の使用自体が避けられてきたという歴史が、今や忘れられつつあるのも大きいと思います」(山口氏)

 そのように自民党内の議員の態度に変化が見られるのは、安倍政権から菅義偉政権へと変わったことも大きいだろう。

「菅さんは安倍さん以上にネオリベの色が強く、規制緩和の推進派ですが、安倍さんのような“伝統的家族観”は持っていないように見えます。また『やってる感を出してるだけ』とも言われますが、不妊治療の保険適用など細かな政策は進めている。選択的夫婦別姓についても、『実現すれば政治的利益がある』と踏めば、そちらに動く可能性もゼロとは言えません」(堀江氏)

 しかし、表向きで「ジェンダー平等」という言葉を使っている自民党の政治家が、本当にジェンダー平等に熱心に取り組んでいるかというと、そうではないケースも多そうだ。

「内閣府の男女共同参画局のホームページを見ると、『男らしさの縛りを解きほぐす』というコラムが掲載されていたり、『「“おとう飯”始めよう」キャンペーン』というページがあったりと、意識改革の部分での努力は見受けられます。それはそれで大切なことだと思いますが、制度改革が進んでいないのが問題です。キャンペーンを行うだけで制度を変えないのは、『制度が問題なのではない。市民の意識が低いのが悪いのだ』という政府の言い訳にも感じられます」(山口氏)

 意識改革ばかりを訴えて、具体的な制度改革が遅々として進まない状況は、新型コロナウイルスの対策にも重なる悲しい状況だ。

 なお海外では、選挙における候補者や議席を男女に一定比率で割り当てるクオータ制が広く用いられており、下院議会で同制度を導入している国は100カ国を超える。ジェンダーギャップの解消のために選挙制度にもメスを入れているわけだが、男性ばかりの自民党の議員が身を切る改革を行う可能性は、選択的夫婦別姓の導入よりもさらに遠い先だろう。一方で選択的夫婦別姓について実施された意識調査では、若い世代ほど「賛成」が多くなるなど、世の中の意識は変わりつつある。ジェンダー平等の問題についてはそうした世論の変化に寄り添いつつ、マスメディアも根気よくアジェンダ設定を行っていくことが求められるのだ。

(取材・文/古澤誠一郎)

最終更新:2021/03/01 09:00
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