「女性活躍」は経済政策で男女平等に興味なし──夫婦別姓に女性議員まで反対! 自民党に根付く男尊女卑思想
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「家族の絆」の裏にネオリベの自助論
ここまで説明してきた流れで、「『女性活躍』を叫んできた自民党が選択的夫婦別姓に反対するのはなぜなのか」「なぜ女性議員にも反対側に回る人がいるのか」は理解できただろう。
無論、日本会議などの保守系の団体の家族観が、自民党の政策に与えた影響は非常に大きい。その具体例と言えるのが、「家族は社会の自然かつ基礎的な単位として尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない」という文言が加わった改憲草案24条や、国家が求める家庭像や親像を提示し、その実現を責務として国民に求める「家庭教育支援法」など、安倍政権が成立を目指してきた法案だ。
「『家庭教育支援法』はイデオロギー政策といえるものですし、第二次安倍政権下で行われた三世代同居への対応を支援する施策なども、イデオロギー的にしか意味をなさないものでした。そうした政策の背後には、日本会議をはじめとする保守系の支持団体への配慮が見受けられます」(堀江氏)
自民党はときに経済的な利益や社会的な問題の解決よりも、「支持団体への配慮」を優先し、政策を決定していたわけだ。
「その点でいうと、婚外子の相続差別の違憲判決が13年に出た際に、高市早苗さんが『子に罪がないと言われればぐうの音もでない』とコメントしつつ、『悔しい判決だった』と述べていたのが象徴的でした。高市さんは選択的夫婦別姓についても“家族の絆”を重視する立場から反対の姿勢を示していましたが、おそらく自民党の政治家の中には、自分たちの理屈に無理があると気づいている人も多いのではないでしょうか。選択的夫婦別姓について、『家族が壊れる』という意見もありますが、夫婦別姓により家族が崩壊したという報告は特にないわけですから」(堀江氏)
さらに、自民党の「家族の絆」を重視する政策態度は、単純に復古的なものではない点にも注意が必要だ。
「早川タダノリさん(『まぼろしの「日本的家族」』などの編著もある編集者・著述家)などがよく書かれていることですが、自民党の家族観はネオリベ的な自助の考えと深く結びついています。そのコアとなっているのが、79年に故大平正芳首相が掲げた『家庭基盤の充実』の政策です。右派の論客として知られる八木秀次氏や高橋史朗氏も、その考えをモデルにすべきだとたびたび提唱しています」(山口氏)
家庭基盤の充実を掲げた演説で大平首相は「家庭は社会の最も大切な中核であり、充実した家庭は日本型福祉社会の基礎であります」と述べ、「各家庭の自主的努力」「日本人の持つ自立自助の精神」といった言葉も使っていた。そして自民党が同年に発表した「家庭基盤の充実に関する対策要綱」では、「老親の扶養と子供の保育としつけは、第一義的には家庭の責務であることの自覚が必要」との言葉もあった。つまり日本型福祉社会とは、個人・家庭の自助努力を第一として、福祉予算の削減を目指す社会とも考えられるのだ。
「『まずは自助に任せる』『家のことは家でやるべき』という考え方ですね。そうした日本型福祉社会では『介護も家で』となりますし、誰が介護するのかといえば、女性がすることになる。つまり『家族の絆』を重視する自民党の政策の根底にあるのは、性別役割分業とネオリベ的な考え方が合体した思想なわけで、その考え方は自民党の改憲草案24条にも、菅首相の政策理念である『自助・共助・公助』にも通底しています」(山口氏)
自民党が「家族の絆」の言葉のもとに掲げる政策は、「男は仕事、女は家庭」という男性稼ぎ主モデルを前提としているものともいえ、そこでは女性が家族のケア労働を引き受けることが想定されている。なお近年の自民党は、経済政策として「希望出生率1・8」を掲げたり、婚活支援に取り組んで「企業子宝率」という指標を作ったりと、女性の結婚・妊娠の支援には比較的熱心。「男女共同参画社会の実現」という表向きの目標とは裏腹に、女性を「家族」の中に閉じ込めておきたい……という本心も透けて見える気がしてならない。
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