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日刊サイゾー トップ > エンタメ > お笑い  > ザブングル解散で考えるツッコミ芸人の生き残り

ザブングル松尾の“芸人引退”で改めて考える“ツッコミ”が生き残る厳しさ、難しさ

「アメトーーク!」の水神様で爆笑をかっさらった松尾

 ここから引退する松尾に焦点をあてて、話していきたいと思う。

 松尾のイメージを聞くと、たいていの人は「アメトーーク!」(テレビ朝日)の“運動神経悪い芸人”で見せた独特の泳法だと思う。

 バサロ泳法でスタートし、あっというまにプールの底に到達した姿は爆笑をかっさらい「水神様」という称号まで与えられた。

 人気番組で笑いを取る。これだけ聞くと活躍しているように思えるが、松尾にとっては嬉しい反面、苦しい部分もあったのでは無いかと思う。

 僕が裏方になってから、とあるイベントで松尾と一緒になった。

 そのイベントで松尾は総合MCを務め、数々のゲストを回し、つっこみで笑いを取り、そつなく司会進行をしていた。ツッコミの人間の本来の仕事はこれなのだ。

 若手の頃ツッコミという役割になった芸人は、自分たちが冠番組を持つことを夢見て、このMCという仕事を研究し、極める為に努力する。その分ボケをする機会があまりなく、ボケる事が苦手になっていくのだ。

 僕はまさにその典型で、松尾も同じだったように思える。

 ひとつの番組にボケは何人いても良い。だがツッコミは一人いれば十分だ。とくに回しやそつなく司会進行をするツッコミは、メインの一人だけでいい。

 それでも必要とされ、いまでも使われるツッコミには「ボケられるツッコミ」「ボケのようなツッコミをするツッコミ」「リアクションがボケ並みに面白いツッコミ」など、ボケの要素が必要不可欠だ。

 言い方はキツイかもしれないが、松尾のように喋り方や見た目にボケっぽい要素が少なく、圧倒的にツッコミが似合う芸人は、居場所が無くなる。

 悲しいがそれが現実なのだ。

 二十歳を過ぎてからお笑いを始めたという事は、とてもお笑いが好きだったはずだ。

 世間に認知されるほどの努力をしてきた人間が、辞めるという決断をした。

どれほど悔しかったか。
どれほど悲しかったか。
どれほど情けなかったか。

 あの時ああすれば良かった、もっとこういう勉強しとけば良かったという後悔がどれほど浮かんだだろう。

 そして今お笑いしか出来ない人間が、お笑いを辞めるという事にどれほど恐怖を感じているだろう。

「一度脚光を浴びた人間はまた舞台に戻る」という言葉があるが、”人生”と”お笑い”を天秤にかけて、人生が勝った人間は戻ることは無いだろう。

 松尾の未来への興味はあまりない。

 ザブングル松尾の芸人としての余命は残り1カ月半。果たして何を見せてくれるだろうか。最後に水神様ではなく、ツッコミで笑いと取っている松尾に出会えるよう願っている。

 頼んだぞ、ザブングル松尾。

檜山 豊(元お笑いコンビ・ホームチーム)

1996年お笑いコンビ「ホーム・チーム」を結成。NHK『爆笑オンエアバトル』には、ゴールドバトラーに認定された。 また、役者として『人にやさしく』(フジテレビ系)や映画『雨あがる』などに出演。2010年にコンビを解散しその後、 演劇集団「チームギンクラ」を結成。現在は舞台の脚本や番組の企画などのほか、お笑い芸人のネタ見せなども行っている。 また、企業向けセミナーで講師なども務めている。

Twitter:@@hiyama_yutaka

【劇団チーム・ギンクラ】

ひやまゆたか

最終更新:2021/02/27 19:00
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