国が押し付ける「男らしさ」の呪縛──現代にはびこる“ヘゲモニック(覇権的)な男性性”
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理想の男性像が、国や企業の都合が優先されかねない
さまざまな男らしさが、今なお覇権争いをしているということだが、ここ10年ほどですっかり普及した“イクメン”も一種の新しいタイプの男らしさのひとつといえよう。
しかし、かつて日本で富国強兵が叫ばれた時代には、国家から男らしさが規定されてきた歴史もある。そして、現在もそうした流れは、かつてより洗練された優しい形で存在し、今でも上から押し付けられていると、田中氏は問題視する。
「僕も厚生労働省のイクメンプロジェクトの委員を務めているので、片棒を担いでいるわけですが……。よく、イクメン言説で『育児で働く時間が短くなっても、効率アップしたので生産性は変わりません』という話がありますが、これはあくまで企業にとって都合のいい男性像です。僕も今2人の子どもを育てていますが、こんなこと、まずあり得ません。労働時間が減れば成果物も減るという単純な構造なのに、育児を頑張ったせいで仕事に穴を空けまくって成果も落ちたイクメンみたいな話は、まず出てきませんからね(笑)。理想の男性像が、国や企業の都合が優先されかねない点は、もう少し警戒しないといけないかもしれません」
ただし、イクメンに関しては、30日公開予定の企画に詳しいが、今は「ベビーテック」と呼ばれる育児のテクノロジーも発展していて、男性でも育児に参加しやすくなっている。
それでは、男性の生きづらさや、これからの男らしさのあり方が議論されている現代において、ヘゲモニックな男性性という位置につくのは、どういったものになるのだろうか?
「かつては、照英さんのように筋肉隆々でハキハキしているのは、男らしいという時代がありましたが、筋肉ってもはやギャグなんですよね。今の若者も筋骨隆々のシルベスター・スタローンやアーノルド・シュワルツェネッガーを見れば、確かに男らしいとは思うでしょうけど、やはり少し冗談っぽくなってしまう。そもそも、実生活であんな筋肉が役立つ場面ってなかなかないですからね(笑)。だからといって、菅田将暉さんや星野源さんを見て、“男らしい”という印象を抱く人は少ないと思います。そのため、働き方の変化に付随していると思っていて、結局いいとこ取りな感じもしますが、『優しく賢くて、普段は優しいけど、いざというときは頼りになる』という男性が、今の社会の理想像かと思います」
このように、男らしさ/女らしさの呪縛から、なかなか自由になれない現実を認識した上で、「月刊サイゾー」2021年1月号「男性学」特集ではさまざまな視点から、「オトコ」を考えていこう。
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