『アメトーーク!』仲良し芸人企画が成り立たなくなる日は近い──サンドウィッチマンが体現する“男同士のケア”
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逆に「不仲が売り」になる…若手の価値観の変化
一方、現在のお笑いブームを牽引する第7世代は、いずれもコンビやトリオの仲が良いことが知られている。次世代を担うと目されている霜降り明星も、YouTubeで「粗品が語る!!せいやのここがスゴイ」という動画を上げているように、相方へのリスペクトの念を隠さない。「仲良し売り」などという陳腐な言葉で切って捨てられないくらい、ごく自然で当たり前のことになってきているのだ。
その価値観の定着ぶりは、現在人気上昇中の関西の若手・コウテイのように「仲が悪い」ことを逆説的にアピールポイントにするコンビすら出てきていることからもわかるだろう。いずれ前述のような『アメトーーク!』の企画が成り立たなくなっていく可能性すらある。
もちろん、かつてのダウンタウンが体現していたような「仲が悪いくらいがかっこいい」という価値観が完全に死んだわけではないだろう。若手の仲が良いのも、上の世代が詰まっているお笑いの世界で勝ち上がっていくためにはコンビで不仲になっている場合ではない、という理由もあると考えられる。だが、ここから再び「仲が悪いのがかっこいい」という価値観に戻ることはないはずだ。
「芸人のみならず、たとえば韓国の男性アイドルたちのように、スキンシップを取ったり親愛の情を表したりといったコミュニケーションを取る主体がポップカルチャーの中で表象として登場してきたことで、新しい男性同士の関係性のあり方を模索する流れが生まれてきたというのは考えられます。同性愛嫌悪と女性蔑視をベースにしたいわゆるホモソーシャルではない連帯の可能性を、男性同士が実践していくことが求められているのだと思います」(前出・清田氏)
当のダウンタウンは今や、10年ぶりとなる共演CMで「浜田~!傘持って行き~!」と、それこそ“ケア”的な身振りを演じている。もちろんCM上の演出ではあるが、当の本人たちも近年はコンビ仲の良さに言及する機会が増えてきた。しみついた古いジェンダー観が批判を浴びる機会の多いお笑い界だが、男性同士の関係性のロールモデルとしては一歩先に進みつつあるといえるのかもしれない。ダウンタウンの有り様に影響を受けた中堅芸人たちからすれば、ハシゴを外されたような気分ではあるだろうが。
(文/五月 晶)
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