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安室奈美恵とBTS──アイドルたちの“通過儀礼”としてのタトゥーと韓国彫師たちの勃興

誰もがタトゥーを楽しむ時代──ネットによる急速な意識の変化

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No Brain(Getty Images)

 00年代に入ると、No BrainやLAZYBONEといったパンクやスカコアバンドがFUJI ROCK FESTIVALに出演したことで、韓国バンドシーンにタトゥーが流行していることが広く知れ渡った。

 彼らのタトゥーを手がけたのは、日本で刺青修業を経験した人気の若手彫師だった。センスの良さと技術力は、モデルや俳優からの信頼も厚く、新時代の象徴的な存在として国内の雑誌でたびたび紹介されていた。韓国アイドル第1世代といわれるS.E.S.のグラビア撮影用にボディーペイントをしたことも話題になり、そのヴィジュアルイメージは彼女たちに安室奈美恵のような“洗練された都会の女性像”という宣伝効果を与えていた。

 この時期はまだ、アメリカや日本のメディアでタトゥーを目にした一部の若者の間で人気に火がついた程度で、絵柄もまだジャパニーズ・スタイルかアメリカン・オールドスクール、チカーノ・スタイルが定番だった。

 10年代初頭になると、国内外の彫師が集まるタトゥーイベントがソウルで開催されるようになり、ファッションに関心の高いお洒落な若者たちがタトゥーシーンを盛り上げようとしていた。彫師同士の国際交流が盛んになったことで技術力が向上すると、タトゥーのバリエーションもグッと広がった。当時の日本のシーン同様、だんだんと各彫師のアーティスト性にスポットが当たるようになっていく。

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Tattoo by Mumi(@mumi_ink

 10年代後半になるとタトゥーの情報はネットがメインになっていた。若者の表現の場はストリートから完全にSNSに移行し、流行はインスタグラマーやユーチューバーなど人気インフルエンサーたちがリードしていく。芸能人よりもっと身近なインフルエンサーの存在は絶大な影響力だ。こうしたSNSは、旧態依然とした社会へのカウンターカルチャーの役割も果たしている。

 インスタグラムをはじめとするネット上では、芸能人たちも新しいタトゥーを誇らしげに見せ、タトゥーの意味やどういう気持ちで入れたのかを語るようになった。その影響でタトゥーのイメージは「コワイ」から「キレイ」へと急速に変化していく。要するに、みんなタトゥーを見慣れていったのである。

 近年脚光を浴びているタトゥースタイルは、芸能人が好んで入れるようなレタリング(文字)をはじめ、極細な線で描かれる繊細なファインライン、動物や花などを写実的に描くリアリスティック、カラーを使用せずに立体感を表現するブラック&グレーなど、軽やかでエモいものが主流だ。総称して「감성(カムソン・感性)타투(タトゥー)」と呼ばれ、韓国発の〝コリアスタイル”として定着している。

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Tattoo by Doy(@tattooist_doy

 私自身、日々インスタでタトゥー画像をディグっていて「お!いいな」と目を引くのは、ほとんどが韓国のタトゥーアーティスの作品だ。近年特に注目されているのは、インスタのフォロワーが45.6万人と世界的人気を誇りEXOのメンバーなど有名人のクライアントも多い Doy、アンティークっぽい優しい色合いが特徴的なMumi、アニメやコミックをポップなガーリースタイルで表現するLog、繊細なカムソン・タトゥーを得意とするAllyHongdamBaamなどのコリアスタイルのアーティスである。

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Tattoo by GIHO(@tm_tat_
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Tattoo by Hongdam(@ilwolhongdam

 もっかタトゥーの人気はごく普通の一般的な人たちにまでカジュアルに広まっている。威嚇的な印象を与えない、お洒落でアーティスティックな作風が定着したことも、多くの人たちがタトゥーを芸術行為であると認めるようになった理由だと思われる。

 最終回となる次回は、韓国タトゥーの市場規模から読み解く、近い将来にやってくるシーンのさらなる変貌について解説したい。

川崎美穂(編集者)

1973年、青森県出身。1996年より雑誌『BURST』の編集に携わり、1999年本邦初のタトゥー専門情報誌『TATTOO BURST』を創刊。雑誌が休刊する2012年まで編集長を務める。現在はフリーランスとして各種メディアのタトゥー企画を担当している。賛否はあれど、タトゥーは〝過去・現在・未来を知る〟貴重な情報媒体であるというのが持論。

Twitter:@koumebooks

かわさきみほ

最終更新:2021/02/23 12:00
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