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日刊サイゾー トップ > カルチャー  > 安室からBTSへタトゥーアイコンの変遷

安室奈美恵とBTS──アイドルたちの“通過儀礼”としてのタトゥーと韓国彫師たちの勃興

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BTSファンの間で物議を醸しているジョングクのタトゥー(Getty Images)

 昨年、米ビルボードチャート1位を獲得したことで世界中の注目を集めた韓国の7人組ボーイズグループ・BTS。快進撃を続ける彼らだが、現在ファンをざわつかせているのがメンバーの肌を彩るタトゥーである。ここでは、長きにわたり世界のタトゥー文化を眺めてきたライター/編集者の川崎美穂氏が「韓国タトゥーの過去と現在」について、3回にわたって解説する。第2回目の本稿では、韓国タトゥーカルチャー史を紐解く。

◆第1回「BTSジョングクのタトゥーにファンは賛否も…彫師の月収200万! 韓国タトゥー文化の変遷を紐解く」

民主化と国際化がもたらした90年代以降の自分らしさとは

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Tattoo by Baam(@baam.kr

 前回はBTSのタトゥー事情をきっかけに、韓国タトゥー文化のルネサンスについて解説したが、ここではさらに歴史を遡っていこうと思う。

 世代間における価値観の違いには、政治の歴史的な変遷も深く関係している。韓国では民主化運動を弾圧しながら軍事独裁政治が長らく続いていたが、1987年の民主化宣言を起点に国が大きく変わった。

 70年代の大衆文化と政治の関係性は、韓国映画『GO GO 70s』(08年)が当時の様子をリアルに伝えている。また、民主化闘争については『タクシー運転手  約束は海を越えて』(17年)や『1987、ある闘いの真実』(同)から知ることができる。韓国における表現の自由とポップカルチャーの知見を深めたい人にはおすすめの映画だ。

 経済の急成長を背景に翌88年にはソウルオリンピックが開催され、韓国の大衆文化は黎明期へと突入していくのだが、その前にK-POPカルチャーの礎となった90年代を振り返っておく必要があるだろう。

 インターネットが普及する前の90年代は、世界の各都市で行き過ぎた資本主義に抗うかのように、ストリート・カルチャーが次々と新しい流行を生み出した時代である。

 何も持たざる者が何者かになるためには、何かを生み出す必要があった。インディーズやアンダーグラウンドのシーンは、既存のルールやジャンルに縛られずに、若者が自由に表現できる場として機能していた。

 ローカライズされたオリジナリティーが武器になることもあれば、個性やスキルで勝負することもできる。そこには誰かの真似ではない“自分らしさ”が求められていたのである。

 ストリートで爆発したパワーは、ときにメインストリームの音楽やファッションとクロスオーバーしながらサブカルチャーとして発展し、やがて世界を席巻していくことになる。この時期に、唯一無二の存在感を放ちながら世界的ムーブメントを起こしていたのがタトゥーだった。

 個人の海外旅行も気軽なものになり、同じカルチャーを好きな者同士は国境を越えてつながるようになる。カルチャーを通じた交流は国際的なコミュニティを育み、国内の市場規模に関係なくシーンは大きく成長していく。

安室奈美恵のタトゥーと日韓のテレビ事情

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安室奈美恵(Getty Images)

 ちなみに、90年代を代表する日本のエンターテイナーといえば、安室奈美恵だと筆者は思っている。自分を貫き、誰からも愛された彼女の生き方にはリスペクトしかない。デビュー当初はティーン向けのアイドルだったが、タトゥーを入れたあたりから世間も彼女のことを一人のパフォーマーとして認識するようになっていったと思う。今思えば、彼女にとってタトゥーは“脱アイドル”の証しだったのかもしれない。そういう意味では、韓国アイドルたちのタトゥーも大人への通過儀礼として捉えることもできる。

 それゆえに、人気絶頂の安室奈美恵がNHK紅白歌合戦に出演した際、視聴者からタトゥーに苦情があったというニュースを見たときは心底同情した。テレビ業界における型にはめようとする風潮は、人間の成長や社会の成熟を拒み、エンタメやスポーツを子どもと老人のためのものにすると痛感した次第だ。以降、日本ではテレビに出演する際、タトゥーを露出しないように各局が自主規制を強化していることは周知の通りである。

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Tattoo by Log(@log_tattoo

 一方、韓国はというと放送通信審議委員会という組織があり、昔ながらの儒教に基づく倫理観が根強いため、実は放送コードは日本よりかなり厳しい。企業のロゴを映したり、青少年に有害な影響を及ぼす喫煙シーンなどはNG。アイドルのセクシーな振り付けや歌詞の内容にもチェックが入るし、同じ文脈からタトゥーの露出も各局が自主規制している。

 韓国アイドルがタトゥーの部分にテーピングをして出演することもあるが、キラキラとした身体に不自然に貼られたテープを見ると、なんとも物悲しい。そう韓国の友人に伝えたところ、インターネットが社会を動かしている今、テレビには誰も期待しておらず、あえて異議を唱える者もいないそうである。

 いまや芸能人はSNSや動画配信アプリを巧みに活用し、世界中のファンと直接つながるチャンネルをたくさん持っている。そこで日々繰り広げられる、生身の人間としての魅力が爆発的な支持を得ているからだ。

 韓国が国内のブロードバンド・サービスを始めたのは98年。政府主導ということもあり10年後には家庭内のインターネット普及率は95%となる。ドラマをはじめとするコンテンツは多チャンネル化し、クオリティーが向上したことは各所で書かれている通り。韓国は、民主化宣言からわずか10年で一気にIT先進国へと進化していくことになる。

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