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数字で見える日本の格差拡大…新型コロナで非正規雇用者が雇用調整に

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※イメージ写真(GettyImagesより)

 新型コロナウイルス感染拡大は多くの人々の雇用に影響を与えている。中でも非正規雇用者は雇止めなどにより、多くの人たちが仕事を失っている。中でも、非正規雇用者は大変な苦境に立たされている。

 総務省の労働力調査によると、2020年は非正規雇用者数が2009年以来11年ぶりに減少。2019年の非正規雇用者数は2165万人だったが、2020年は2090万人と75万人(3.5%)も減少した。(表1)

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 一貫して増加してきた非正規雇用者数が減少に転じたのが、正規雇用者の増加によるものであれば喜ばしいことだが、この減少は新型コロナの影響による雇用状況の悪化によるもの。

 厚生労働省が発表している「新型コロナウイルス感染症に起因する雇用への影響」によると、2020年12月25日調査時点で雇用調整の可能性がある事業所数は12万371人、解雇等の見込みのある労働者数は7万9522人、このうち非正規雇用労働者数は3万8009人にのぼった。厚労省の調査では3万8000人だが、労働力調査では75万人の非正規労働者の職が失われている。

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 2020年の非正規雇用者数は、2月を除いたすべての月で前年同月比を割り込んで推移した。特に、6月から9月の間は100万人を超える大幅な減少状態が続いた。実数では、4月に2000万人割れ直前の2019万人まで減少した後、徐々に増加を続け、11月には2124万人まで回復したが、12月には再び前月比31万人減の2093万人に低下した。

 このように非正規雇用者は企業にとって“雇用調整”の手段として使われる側面があるのだが、実際に企業は非正規雇用者をどのように考えているのだろうか。

 2月12日に厚労省が発表した「令和元年就業形態の多様化に関する総合実態調査」によると、「正社員以外の労働者がいる事業所」は 84.1%にものぼっている。

 この調査は7499事業所を調査したもので、正社員以外の労働者がいる事業所の割合は、2003年には75.3%だったが、2014年には80.1%と80%を超え、2019年には84.1%にまでになった。これは非正規雇用者数の推移と一致している。非正規雇用者は特定の業種や企業だけではなく、広く多くの企業に組み込まれたということだ。

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 では、どのような非正規雇用者が働いているのかというと、2019年時点でパートタイム労働者が65.9%を占めている。パートタイム労働者は2003年でも57.7%と半数以上の事業所が雇用しており、ジリジリとその比率が高まっている

 2003年からの推移では、出向社員は5%程度、専門職としての契約社員は10~13%、派遣社員が10%前後で推移する中、確実に増加しているのが2003年の11.3%から2019年には19.7%に増加した嘱託社員。

 この嘱託社員の多くは、高齢化が進む中で政府による高齢者の雇用延長に伴い、多くの企業が定年延長ではなく、定年後の再雇用という形で嘱託社員を受け入れていることが反映されている。

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 これは非正規を雇用する理由にも明確に表れている。2019年時点で嘱託社員がいる事業所の80.0%が「高年齢者の再雇用対策のため」と回答しており、2014年の77.1%から増加している。

 一方、出向社員、契約社員、派遣労働者、臨時労働者の雇用にはそれぞれ特徴が見られる。「正社員を確保」では、派遣社員が2014年32.5%から2019年には47.8%に増えている。「専門的業務への対応」では、出向社員が2014年の44.3%から57.0%に、契約社員が同49.3%から54.4%に増加。「臨時・季節的業務量の変化に対応」では、臨時労働者が2014年の46.2%から59.1%に増加している。

 ただ、総体的に見れば「正社員を確保できないため」との理由で、非正規労働者を雇用する事業所が2014年の27.2%から、人手不足だった雇用環境を受け2019年には38.1%に増加してはいるものの、依然として「賃金節約のため」と回答した事業所が2014年の38.6%から2019年には31.1%に減少したものの3割以上となっている。

 こうした影響を受け、正社員と非正規雇用者の間には、依然として大きな賃金格差がある。2019年時点で月収10万円未満は正社員では1.2%なのに対して、非正規雇用者では27.4%、20万円未満は正社員13.2%、非正規41.7%と非正規雇用者の約7割が月収20万円未満となっている。

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 もちろん、非正規雇用者の中には、「自由な時間で働ける」といった理由などで、自ら非正規を選択している人もおり、正社員以上に所得を得ている人もいるだろう。だが、労働者としての立場が弱く、所得面でも正規雇用者と格差がある非正規雇用者は多い。

 筆者の知り合いにも、新型コロナ禍にあって、雇用調整の対象となった非正規雇用者は多い。こうした非正規雇用者に対して、生活を営んでいくための支援は必要だ。

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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最終更新:2021/02/22 19:00
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